2014.3.15 第52回理事会
2014年度事業計画
はじめに
今日の高等教育を取り囲む世界の動向として、政治、経済、科学等の分野でグローバル化が進展し、情報社会を背景にEU圏ではトランスナショナル・モビリティ(国家を超えた移動性)を目指した計画が進行している。知のモビリティは重要な概念であり、我が国の高等教育においても、新たなフィールドを目指す資質を高めた人材を必要としている。
18歳人口の増加は1992(平成4)年の205万人をピークに減少に転じ、2020年には115万人、2030年には103万人と予想されている。いわゆる大学の量的拡大が反転した後、現在は質的転換の時代に入っている。
これと軌を一にするように、1991年に大学の設置基準大綱化が行われ、同時に、基準緩和を補完する形で、各大学に教育研究の質保証と経営の自己責任を求める時代となり、2004年4月に大学への認証評価制度が開始されており、同年には改正私立学校法が公布されている。
その流れの中で、2005年1月28日の中央教育審議会の『我が国の高等教育の将来像について(答申)』では大学への質保証システムの導入が唱えられ、2008年12月24日の中教審の『学士課程教育の構築に向けて(答申)』においては、義務化されたFDと並びSDがクローズアップされた。「大学経営をめぐる課題が高度化・複雑化する中、職員の職能開発(スタッフ・ディベロップメント〈SD〉)は益々重要」であるとして職員が専門性の向上を図り、「教育、経営など様々な面で、その積極的な参画を図っていくべき」としている。大学職員の役割を重視し、自発的かつ継続的SD活動を推進する当学会のミッションに関わる課題である。さらに、同答申ではマネジメントサイクル、PDCAサイクルを大学改革に機能させることが求められた。
また、2012年8月28日の中教審の『新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~(答申)』の本文では、「全学的な教学マネジメントの確立のためには、学長のリーダーシップによる全学的な合意形成が不可欠であり、それを可能とする実効性ある全学的なガバナンスと財政基盤の確立が求められる。」(16頁)とし、さらにもう一箇所では「大学改革を推進し、大学が社会をリードする役割を一層果たしていくために、多様で多目的な大学マネジメントの本質に相応しいガバナンスの在り方や財政基盤の確立について議論を進める」(26頁)として、大学にガバナンスを求める時代となった。
しかし、ここではガバナンスの定義がなされていない。私たちが考えているようなマネジメントをチェック、規制するという意味では使用されていない。ガバメントとは国家の行政府機能であるが、それ以外の組織での統治をガバナンスという言葉に意味解釈を付けて使われているようである。もとより、1970年代の先進各国では、政府や自治体等でのガバメント(行政府)機能が弱まったこと、民主主義に通底する統治に関わる機能不全等への危機意識から、ガバナンスという概念が生まれ、広まってきたと考えられる。
現在、特に私立大学の場合、このガバナンス概念への認識がなければ学校法人の行うマネジメントや教学マネジメントを補完することができない。すなわち理事会が自ら学校法人の計画をたて、執行し、マネジメントを行い、結果を報告するだけでは、ガバナンスとは言えず、理事会、評議員会、監事のそれぞれの機能が分離・明確化され、チェック、監督、監視の機能が果たされることが、今日の厳しい環境下にある大学の管理運営にとってはきわめて重要である。
1.ガバナンスとマネジメントについての正確な理解と見解
・ 高等教育のこれからおよび現在の重要課題のひとつに「大学のガバナンス」がある。
・ 文部科学省、経済同友会などが、様々な論考、議論、方針提示がなされている。
・ しかし現在の議論状況は、「ガバナンス」と「マネジメント」が混同されている。
・ 「大学のガバナンス」の意義、役割についてJUAMとして正確な理解と見解をもつ必要がある。
・ その成果を文部科学省に対して提言し、必要であれば私立学校法の問題指摘などにも及ぶなど、JUAMとしての提言力を強めていきたい。
2.高等教育、大学問題に関する提言力
・ これまで各地区研究会、テーマ別研究会などが非常に活発に行なわれてきた。また研究会間の連携でジョイントの企画も生まれており、
このことは非常に重要である。
・ そうした到達点に立ち、JUAMが提言力をもつ頭脳集団、ブレーンとしての力を発揮できるようにしていきたい。
・ そのためにはさしあたり、大学職員のもつ組織力、チームの力を活かして、常時ふたつないし3つのテーマを設定し、
研究活動を重ねていくことが必要である。
・ その結果、高等教育、大学問題に関するトレンドに対して、常に行政や社会に対して提言ができるような力をつけていくこととしたい。
そのための方法やしくみは、今後の常務理事会、理事会などで検討したい。
3.JUAMの学術的蓄積をこれまで以上に社会的に公表、発信
・ 2016年度にJUAMは20周年を迎える。JUAMには20年の高等教育、大学問題、大学行政管理に関する様々な蓄積がある。
これらを一層高める契機とする必要がある。
・ 具体的には2016年は学会誌について20周年特別号を発行すること。加えて、創立時から今日まで、或いは現在の会員の関心や取り組みに
即して、テーマを設定し学術叢書、モノグラフシリーズなどを発行すること、などがさしあたり考えられる。
・ JUAMとして、これまでの成果として積み上げてきたことを、社会に公表し活かすことが課題であり、20周年に向けて具体化できないか、
検討を開始することとしたい。
4.法人化
現在、大学行政管理学会は法人格を持たない「任意団体」という位置づけであるが、会員規模や予算規模を鑑みて法人格の取得について検討(組織委員会への諮問・答申、常務理事会での検討)を重ね、2013年7月20日開催の第93回常務理事会にて、法人格を得る方向で検討を進めることが適切であるという結論を得た。
ただし、法人格の種類等については慎重に検討を進めていただきたい。なお、法人化にあたっては、法人格の種類にあわせた「会計基準その他の会計慣行」への移行を要することも指摘されており、引き続き組織委員会において慎重に検討する。
5.20周年記念事業の準備 <追加事項>
本年2014年から2015年へ2年の時を経て、その直後の2016年9月には大学行政管理学会創立20周年を迎える。本年は、これに向けた記念事業計画の検討へ着手し、(仮称)20周年記念事業準備委員会等を発足し、記念事業及び20周年以後の活動等も検討課題として、段階的に準備を始める必要がある。
当学会20周年記念事業の準備については、記念基金を積み立てる必要がある。具体的な事業内容の企画は、準備委員会に委ねるとして、他学会との連携・協働によるシンポジウムとイベントの実施など学会の発展に相応しい幅広い企画が望まれる。
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〈計画の概要〉
(1) はじめに
➢ 社会の動向とその変化を背景とした大学に対する期待
➢ 教育の質保証実現に向けた大学行政管理の役割
➢ 自発的かつ継続的SD活動の重要性とJUAMの役割
(2) 本会のミッションとビジョン
➢ 孫福弘設立発起人代表挨拶からの引用
「大学にあっては教育・研究面の改革と同時に管理運営面の改革も極めて重要であり、この両者があいまってはじめて、我が国の大学が国際競争力をもつ水準にまで到達することができるものと考えております。管理運営面が抱える最大の問題点は、大学という組織のマネジメントを総体で見ると、コンセプト上でも実行レベルでも、まだ十分には近代化が成し遂げられていないことであり、人的・制度的に見ると高度のプロフェッショナルな能力を持った行政管理の専門家が育っていないという点でありましょう。」
➢ 『原点の再定義』 と『次世代の育成と精神のリレー』
・ 原点の再確認と再定義とJUAM20周年への準備
・ 大学行政・管理の多様な領域を理論的かつ実践的に研究
・ 大学アドミニストレーター人材育成
(3) 事業計画
研究活動の一層の発展
➢ 研究会開催数、研究会参加者数の拡大
➢ 研究集会での発表数と発表者数
➢ 学会誌への掲載数と投稿者数
➢ 2009年度から研究会運営補助費を増額(維持)
➢ ミッションとビジョン実現のため、回数だけではなく、内容のより一層の充実、蓄積、共有(JUAMとしての財産化)が重要
➢ 研究活動に資するための文献情報の提供と試行
➢ 地区別研究会や各研究会・研究グループ間での活動の連携・交流の活性化
➢ 研究会活動を踏まえた社会に対する提言力の強化
➢ 20周年(2016年度)に学術的刊行物の刊行(発信)
⇒20周年記念号+定期号(2冊)、モノグラフシリーズの刊行の検討
6.会員の拡大と育成、全国各地における本会活動の積極的展開➢ 2013年9月8日現在 1360余名⇒全国大学職員80,674名の2% 1,600名(目標)
➢ 現在360余校⇒全国大学数782大学うち半数390校が在籍(目標)
➢ 参加者、加入者拡大への呼び掛けと工夫
➢ 学会費の出元(大学か個人か)、学会入会、退会の現状
➢ 地域の力、女性の力、若手の力、
➢ 東日本大震災復興への支援(会員が現地に出向き各種活動への参加)
7.国際交流の推進
➢ AUA、KAUAとの交流(派遣・受入れ)
➢ KAIEとの交流(ワークショップ予定)
➢ JAFSAとの協力関係の強化
8.高等教育研究関係団体やマネジメント研究会等との連携・協力の促進
➢ 各種団体との連携・協力
➢ プロフェッショナル職員を育成する大学院等との連携・協力
9.広報体制の整備と広報活動の充実
➢ ホームページの充実
➢ マスコミへの情報発信
➢ 英文による情報発信への着手
10.本学会の管理・運営体制の整備と活動基盤の充実
➢ 常務理事会と理事、役員と委員会の関係強化
➢ 研究活動支援強化および財政安定化
➢ 20周年(2016年度)に向けた準備基金の検討
➢ 法人化の検討(継続)
➢ 本会OBとの連携(研究会活動への参加呼び掛け)
11.理事会・常務理事会の開催予定
➢ 原則として、事務局長校(東京電機大学)で開催
➢ 地区研究会と連携し、役員が地区研究会へ参加する機会を設ける(2回程度)
➢ 理事会:2014年3/15 (土)、9/5 (金)、2015年3月
➢ 常務理事会:2014年1/11 (土)、3/15 (土)、5/17 (土)、7/19 (土)、9/5 (金)、10月、2015年1月、3月
12.第18回定期総会・研究集会会場校
➢ 2014年9月6日(土)・7日(日)
東北学院大学(土樋(つちとい)キャンパス)