第6回孫福賞(原 邦夫)

第6回(2012年度)孫福賞受賞者

原 邦夫 氏(慶應義塾)

1. 表彰日:2012(平成24年)9月8日 2012年度定期総会・研究集会

2. 場 所:芝浦工業大学 豊洲キャンパス

3.表彰内容:

 孫福賞選考規程第七条第一項第二号(委員会、支部・地区別研究会、テーマ別研究会・グループ等の成果又は構成会員の特に優れた業績)及び第三号(大学職員の社会的若しくは国際的評価又は認知度の向上に関わる特に優れた業績)に該当し、同規程第二条第二号および第三号により孫福賞を授与する。

4.選考理由:

(1)委員会、支部・地区別研究会、テーマ別研究グループ等の成果又は構成会員の特に優れた実績(規程第7条第1項第2号)

 原 邦夫 氏は、大学行政管理学会(以後、学会とする)創設まもなく入会し、1999年には「大学人事」研究グループリーダーを務め、以降4年間にわたり同グループリーダーとして、大学行政管理学会およびその主翼の一端を担う「大学人事」研究グループの土台を構築してきました。2004年にはその総括ともいえる『大学人事研究Ⅰ』(学校経理研究会)の出版にも多大な貢献を果たしています。学会全体の担い手としても、1999年より同学会常務理事、2001年からは副会長を歴任、組織の基礎固めや拡大・管理運営の強化に尽力されました。その活躍が認められ、2003年からは学会会長となり、在任期間中には、役員と一丸となって、地区研究会の充実を図るため、東北地区等研究会の立ち上げ、テーマ別研究会では、研究・推進研究会や学事研究会の設置を提言、その他大学改革研究会の新設等に加え、若手職員の育成にも力を入れ、現在に至る学会の大きな基盤を作ったといっても過言ではありません。

 また、学会においては、慶應義塾の事例を元に、特に大学経営改革・人事政策分野に関する発表を数多く行い、その先進的な取組みや氏の新たな視点は多くの大学職員の刺激となり、各大学の問題点の認識と改革への推進に寄与したことは想像に難くないと思われます。

 初代会長であり、本学会の呼び掛け人である故 孫福氏と志を同じくし、孫福氏に続き学会黎明期における先導者として多様な活動をされてきたことは、我々に高等教育界が抱える問題の認識とその解決策に向けた様々な示唆や一筋の光明をもたらしたことと確信しています。

(2)大学職員の社会的若しくは国際的評価又は認知度の向上に関わる特に優れた実績(規程第7条第1項第3号)

 氏は、学会においては大学改革や人事給与制度に関わるテーマを中心に多くの発表を行ってきましたが、学会外においても、高等教育発展のための様々な活動を行ってきました。例えば日本私立大学連盟では、研修企画委員会職員総合研修運営委員会や学校会計委員会財務検討分科会に参加し、私立大学連盟の研修の様々な提示を行ってきました。また、大学基準協会財務評価分科会委員、私立大学社会的責任【USR】研究会幹事メンバーの他、大学病院経営の諸課題にも目を向け、研究会の代表幹事を務めてきました。各地の大学等での講演依頼も数多く務め、大学業務改革や人事給与制度のあり方等、多くの職員の経営力強化に尽力されました。

 時には、中国からの研修団との交流も図り、日本の大学の諸環境の変化等について意見を交わすことなどの取り組みも行っています。

◆大学改革を推進するための実践的な取り組み

 氏は、1971年に慶應義塾に就任し、塾監局経理部経理課長、医学部人事課長、塾監局人事部長、研究支援センター・研究助成センター部長、経営改革プロジェクト室事務長、大学病院事務局長兼信濃町キャンパス事務長を歴任し、現在に至ります。この軌跡は、まさに大学の転換期を迎えた大学行政改革の道程とも重なります。その取組みは、学費改革や業務のIT化推進、外部資金獲得への新たな戦略、病院、人事給与政策の改革など多方面にわたり、大学職員の在り方に大きな転機をもたらしました。特に評価すべき点は、「職員の意識改革」への留まることなき挑戦とその取り組みの発信にあると考えます。いかに職員にモチベーションをもたせ、能動的な職員として成長に導くかということを実践しながら、多くの職員にメッセージを発信し続けたことは、確実に多くの志高き職員を生み出す結果につながったと感じています。ややすれば大学業務にありがちな既存の枠組みの中で安住したり、成果を内部に留めたまま、滞留させず、広く高等教育界の共有知として多くの場へ伝播させていったことは、悩める大学職員への新たな希望と道標になったことでしょう。

 氏の極めて活発かつ弛みなき広範な取り組みは、同時に常に人に対する温かなまなざしと、信頼を育む誠実さに充ち溢れていることは、接する誰しもが実感するところです。そして、周囲の人たちの協力ややる気を引き出すリーダーシップや組織力と、大学行政を先導してきた進取の精神は、転機を迎えた大学職員の範とすべきものであり、高等教育界に新たな光を示した称えるべき功績です。

5.孫福賞を受賞して

 今年度の総会におきまして、第6回孫福賞をいただき、大変光栄に思っております。

大工原会長、横田選考委員長をはじめ、推薦してくださった理事の方々、選考委員の皆さん、ご審議をいただいた理事の皆さんに厚くお礼を申し上げます。

 受賞は、私一人の業績ではなく、学会活動を通じて、会員の皆さんとの連携、協力、そして、ご支援をいただいた結果と考えています。あらためて皆さんにはお礼を申し上げます。

 孫福さんは私にとっては、上司であり大恩人でありました。孫福さんの功績を顕彰した孫福賞は、私が学会の会長の時に創設に携わった経緯もあり、現役最後の年にこの賞をいただくということは、この上もない喜びです。

振り返りますと、1996年12月に上司であった孫福塾監局長に勧められこの学会に加入し、1998年12月には、丸善の大学行政管理学会事務室に呼ばれ、孫福さんと早稲田の村上さんから、「大学人事」研究グループのリーダーをやってほしいとの要請を受け、本格的な学会活動を開始した次第です。

 「大学人事」研究グループ は、1999年4月17日に第1回の会議が、24名の参加者を得て、慶應義塾大学三田キャンパスで開催されました。その後、ほぼ毎月1回の定例会議が持たれ、夏には恒例となりました合宿が継続して開催されています。そして、本年5月26日には第100回目の会議が、日本大学本部キャンパスで開催されました。

1999年から2005年までは、学会の役員として各研究会や地区研究会の立ち上げにも参画し、学会内外の人的ネットワークの輪を広げる中で、各種の情報・知識の習得を得ることができました。今日に至るまで、14年余りは、大学行政管理学会が私の成長の糧(かて)の中心でありました。最近の役員や研究グループのリーダー等のリストを見るにつけ、一緒に活動してきた、若手の皆さんが、会の運営の中心を担ってくれており、大変心強く思っています。

 個人的には、最近は、慶應義塾大学病院・医学部の事務局長をしていた関係で、大学行政管理学会で既に孫福賞を受賞しています日本大学の渡邊さんたちと、大学病院経営研究会を、日本大学・帝京大学・東京大学・慶應義塾大学の医師・職員で立ち上げ活動をしています。また、昨年11月からは、慶應義塾関係の財団法人国際医学情報センター(医学・医療・医薬の国内外の最新情報を、収集・加工・分析のうえデータベース化し、医薬品メーカーや病院等に販売をするのがメインの業務)に出向し、常務理事・事務局長をしています。

 今後も、福澤先生の教えのひとつ半学半教(自らが学んだことを後輩に教え、自らはさらに上級のことを学ぶ)を実践し、前向きな考えのもと、大学行政管理学会を含め高等教育関係の発展のために、取り組んでいければと考えています。

<原 邦夫氏プロフィール>

<学歴>1971年 明治大学文学部(地理学)卒業、1980年 慶應義塾大学大学院 経営管理研究科 修士課程修了

<職歴> 1971年4月 慶應義塾 ビジネススクール、経理部経理課長、医学部人事課長、人事部長、研究支援センター部長、経営改革プロジェクト室事務長、大学病院事務局長兼信濃町キャンパス事務長を経て、塾監局参与(出向・財団法人国際医学情報センター常務理事兼事務局長)(現在)に至る。

<その他役職>

1999年9月~2001年9月 大学行政管理学会 常務理事、2003年9月~2005年9月 同学会 会長、2009年10月~2012年3月 大学病院経営研究会 代表幹事 他多数。