第10回(2017年度)孫福賞受賞者
松井 寿貢 氏(広島経済大学)
1. 表彰日:2017(平成29)年9月2日(土) 2017年度 第21回定期総会・研究集会
2. 場 所:西南学院大学
3.表彰内容:
孫福賞選考規程第7条第1項第一号(研究集会発表、学会誌投稿その他これに準ずる本会内外の特に優れた研究・実践業績)、第二号(委員会、支部・地区別研究会、テーマ別研究グループ等の成果又は構成会員の特に優れた実績)及び第三号(大学職員の社会的若しくは国際的評価又は認知度の向上に関わる特に優れた実績)に該当し、同規程第2条第一号、第二号及び第四号により孫福賞を授与する。
4.選考理由:
(1) (研究集会発表、学会誌投稿その他これに準ずる本会内外の特に優れた研究・実践業績 (第7条第1項 第一号) 松井寿貢氏は1997年1月、大学行政管理学会(以下JUAMという。)の設立と同時に学会員となった。1999年9月より理事1期、2001年9月から2005年9月までは常務理事2期を歴任、その後も現在まで、中国・四国地区研究会、大学経営評価指標研究会、女子大学研究会などを中心に活躍し、創世記より長年にわたりJUAM の発展を支えてきた。
1997年9月に開催された第1回の研究集会では、「組織改革の目指すもの」というテーマで研究発表を行い、これまで主なものでも11回の発表実績がある。関心のある研究会が開催されればフットワーク軽く全国各地に赴き、積極的に質疑や議論に参加し会員との交流を深めている。更に2002年からは中国、韓国、台湾の8大学の視察にも参加するなど、その活動は国内にとどまらない。
JUAMにおける執筆活動としては2003年発行の『大学行政管理学会誌 №4』に、「学費-その基礎知識から教学政策まで」を発表している。
JUAM以外での主な執筆活動としては、2003年には、広島大学高等教育研究開発センターが刊行する『高等教育研究叢書74』第5章に「私立大学経営と大学職員~組織運営の観点から」を発表。その後も日本私立大学連盟発行の『大学時報』、(株)ベネッセコーポレーション発行の『Between』、私学経営研究会発行の『私学経営』などに、多数投稿がある。
また、全国各地で「大学職員」、「内部監査」、「ガバナンス」、「コンプライアンス」などをテーマに精力的に講演活動を展開し、多くの大学教職員に影響を与えており、講演実績は33回にのぼる。
(2) 委員会、支部・地区別研究会、テーマ別研究グループ等の成果又は構成会員の特に優れた実績 (第7条第1項 第二号)
松井氏は地方におけるJUAM活動の普及や学会員の獲得に尽力され、理事として2000年12月には第1回となる中国・四国地区研究会を広島で開催。その後、常務理事であった2003年には、第7回定期総会研究集会を当時の本務校である広島修道大学で開催し、大きな成功を収めた。これが契機となり地方におけるJUAMの認知度が上がり、学会員が増加することで研究活動が活性化してきたことは、松井氏の特筆すべき功績のひとつである。
中国・四国地区研究会は、2017年度に記念すべき50回の節目を迎えた。地区研究会の立ち上げから基礎固め、発展、拡大、維持に果たしてきた松井氏の貢献は多大である。
地区研究会活動の傍らで、松井氏は2003年10月には大学経営評価指標研究会に入会し、所属大学での経験に基づく発言により議論をリードし、テーマ別研究会の活性化にも尽力してきた。研究会は、基本的に毎月都内で開催しているが、松井氏は毎回、広島から参加し熱心に議論に参加、特に、2007年9月から2年間は、研究会の4代目座長として、第3期の「大学教育力向上に関する調査」の成果を基に、「教育力の向上」推進のためには「教育力向上マネジメント力」が重要との観点から、さらに具体的な方策を研究すべく、「教職協働のための方策研究」をテーマに掲げ、調査研究を行った。これは、「FD,SDの推進はUD(ユニバーシティ・ディベロップメント)である」ことの実証研究であり、日本の大学におけるFD,SDの義務化や開発にも寄与してる。
2015年12月には顧問に就任し、現在も機会があるごとに会合には出席し適切なアドバイスを行っている。
(3) 大学職員の社会的若しくは国際的評価又は認知度の向上に関わる特に優れた実績 (第7条第1項 第三号)
松井氏は1971年に学校法人修道学園に入職、現在は学校法人石田学園常務理事をされている。
広島修道大学では、大学事務システムの開発、業務改善型の内部監査室の設立、三様監査の導入など、私立大学における先進的な取り組みや実績を数多く残した。また当時から、職員の能力開発、とりわけ女性職員の育成や登用にも熱心に力を注いでこられた。
本務校の業務に加え、日本私立大学連盟では孫福委員長の下で大学問題研修運営委員を、また、現在は日本私立大学協会で中四国支部事務局長、大学事務研究委員会及び同委員会の政策小委員会委員などを務め、国内の高等教育の持続的発展にも貢献している。
更に2009年からは日本高等教育評価機構評価員となり、2015年からは評価チームの団長としてもご活躍されている。
上述の通り松井氏は、継続的で地道な取り組みにより、国内高等教育の発展や大学職員の地位の向上に、重要な役割を果たしてこられた。
また、地方の中規模大学にあって、自大学はもとより、地域にある大学の発展、更に中国・四国地区におけるJUAM活動の活性化には、とりわけ多大な功績を残している。
周囲の職員を巻き込みながら実務やSDを推進し、いまなお情熱とリーダーシップをもって大学改革を推し進める松井氏は、大学職員のロールモデル的存在でもある。地方創生の時代にあって松井氏こそ孫福賞の受賞にふさわしいと言える。
5.孫福賞を受賞して
この度は孫福賞受賞にあたりまして、身に余る光栄なこととありがたく思っています。ご推薦いただきました理事の皆さま、原選考委員長はじめ選考委員の皆さま、西川会長はじめ役員の皆さま、その他関係者の皆さまに厚くお礼申し上げます。
受賞候補になったと言われた時は、私で良いのかと戸惑いを覚えました。第1点は、私は他の受賞者の方々のように突出した能力はなく、愚直に長く大学職員を続けてきただけです。第2点は、来年古希を迎える年齢で、既に旬が過ぎています。飛行機でいえば、ジャンボ機の747です。日本の航空会社では747は日本の空を飛んでおらず、もう退役しています。
しかし、西川会長や他の方々のお話をお聞きし、次の理由で頂いてもよいのかなと思うに至りました。
第1点は地方大学の職員からは初めての受賞ということです。日本の大学生の約8割を私立大学が担っていますが、その約6割を地方の私立大学が担って います。地方の私立大学の職員の励みにでもなればという気持ちです。
第2点は孫福さんとのご縁で、孫福さんからのご褒美かなと思いました。それで、ありがたく受賞させていただくことにしました。
さて、私たち大学職員の管理職の責務の一つに、職場や学会の若い方々を育成することがあります。吉田松陰先生は、人は皆、何か良い点を持っているので、そこを引き出して誉めたということです。伊藤博文もそれで育ったのでしょう。
米百俵で有名な越後長岡藩出身の山本五十六元帥は「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、褒めてやらねば、人は動かじ」といっています。両者に共通しているのは人の良いところを見て褒めるということです。
どうやらこの辺りに育成のヒントがあるのではないでしょうか。
それから、私は今でもまだできていませんが、管理職は人格陶冶に努めることが必要だと思います。大学は人間陶冶の場ともいわれます。つまるところ、何事も最後は人間性だとこの年齢になって思います。
昨日は職場の教職員の研修会があり、夜は岡山県の山奥で職場の慰安旅行でした。今日は早朝に出発しローカル線で2時間かけて岡山駅へ行き、岡山駅から新幹線に乗り、車中で「私学経営」9月号の実践女子学園理事長の井原徹さんの連載を読みました。ジョン・F・ケネディの演説を基に執筆されていましたが、これを大学行政管理学会用に引用して、受賞スピーチを閉じます。
学会が私に何をしてくれるのかを期待するのではなく、私が学会に何ができるのかを考えることが大切ではないかと思います。これからも微力ですが、学会活動を続けたいと思っています。この度は、誠にありがとうございました。
<松井 寿貢氏 氏プロフィール>
<学歴>
1971年3月 | 広島商科大学(現広島修道大学)商学部経営学科 卒業 |
<職歴>
1971年4月 ㈻修道学園 広島商科大学(現広島修道大学)入職
図書館主任、総務課人事係、事務開発課係長、事務開発課課長補佐、総務課長、事務局長、修道学園評議員、監査室長
2008年3月 ㈻修道学園退職
2008年5月~ ㈻石田学園理事・評議員、広島経済大学事務局長
2017年4月~ 常務理事
<その他役職>
1997年4月~2001年3月 日本私立大学連盟 大学問題研修運営委員
2000年4月~2004年3月 広島大学高等教育研究開発センター 客員研究員
2001年6月 平成13年度 日本育英会広島県支部奨学生候補者選考面接委員
2007年4月~2008年3月 日本私立大学連盟 経営委員会アカウンタビリィ分科会委員
2007年5月~2007年8月 ㈳日本能率協会「大学経営評価指標」策定アドバイザー
2008年5月~ 日本私立大学協会 中四国支部事務局長
2008年5月~ 日本私立大学協会 大学事務研究委員会委員
2009年5月~ 日本高等教育評価機構 評価員
2015年5月~ 日本高等教育評価機構 評価チーム団長
2016年6月~ 日本私立大学協会 大学事務研究委員会 政策小委員会委員