2019-2020年度第2回(通算60回)大学行政管理学会中国・四国地区研究会 「EMIRへの期待」

西國真一
2020/01/30

日時:2019年11月30日(土)13:30~17:30
場所:ノートルダム清心女子大学

大正大学エンロールメント・マネジメント研究所長、IR・EMセンター長の福島真司氏を講師にお招きし、関東から九州地区までの大学教職員37名が参加し、研究会を実施した。

「あなたの大学にとって、何を可視化することが大切なのか」をテーマに昨今のIRに関する諸問題を詳しく解説いただいた。印象に残ったのは、次の5点である。
①IRは補助金に関係していることもあり、どの大学も業務過多の傾向にある。
②数値目標、データ管理(何%になったか、何倍にするか)よりも、数値を基に条件や前提を決めて、仮説を立てることが重要である。
③データを見ながら、入学から卒業まで学生の自己実現(成長)のために何ができるかを考え、学生を横断的に管理することが大切である。
④大学で自己実現ができた学生は、卒業後も大学に関わり、寄付金、子どもを入学させるなど大きな効果をもたらす。
⑤愛校心を育むことが、大学全体の士気を高める。
これまでIRというと、数値・データの管理や学長室などの担当部署と教職員の連携について、議論される機会が多かった。しかし、このたびは、そのひとつ上をいく「数値・データの先にあるもの、大学として数値よりも大切なもの」を参加者にご提示いただいた。
後半は、「仮想大学の改善案を考える」をテーマにワークショップが行われた。各班では、数値を基に仮想大学の問題点や改善点を洗い出し、入試や入学前教育、教学担当など参加者に与えられた立場からデータを見て、仮想大学の実情を把握し、改革の提案書を作成・発表した。これは非常に現実味があり、有意義な時間であった。

最後のまとめとして、福島氏からは次の4点が示された。
①EMを定義するには、科学的マーケティング手法による大学マネジメント・サイクルが必要である。
②教育の質保証より、教職員の質保証を問われる今日、学生のためより「学生の立場になって考える」データ管理が重要になってきた。
③学生価値を創造し、学内の意識統一のためにEMIRの考え方が大切になる。
④データでは見えない、計れない学生の満足度(幸せ)の数値も大切である。学生の内面は、数値だけで計ることはできない。
このたびの研究会で得られた知見を基に、自大学のEMIRを考えていきたい。

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