第13回孫福賞(金田 淳一)

第13回(2024年度)孫福賞受賞者

受賞者:金田 淳一(法政大学)

1.表彰日:2024(令和6)年9月7日(土) 2024年度 第28回定期総会・研究集会

2.場 所:日本福祉大学 東海キャンパス、オンライン同時配信

3.表彰内容:
孫福賞選考規程程第7条第1項第1号(研究集会発表 学会誌投稿その他これに準ずる本会内外の特に優れた研究・実践業績)、第2号(委員会 支部・地区別研究会 テーマ別研究グループ等の成果又は構成会員の特に優れた実績)及び第3号(大学職員の社会的若しくは国際的評価又は認知度の向上に関わる特に優れた実績)に該当し、同規程第2条により孫福賞を授与する。

4.選考理由:
金田淳一氏は、1998 年本学会入会後、研究・研修委員長や学事研究会リーダーとして、学会の研究発展に寄与し、特に、研究集会創立 20 周年記念事業では、実行委員会委員長を務め、孫福初代会長を追想するシンポジウムなどを企画し、自らコーディネーターとして参加するなど、研究活動を積極的に推進した。外部では日本私立大学連盟や大学コンソーシアム八王子などの団体で委員長や委員などを務めるほか、講演・パネリストや執筆活動など、特にSD、若手職員のキャリア形成などのテーマで幅広く研究発表活動を行っている。
学会の運営では、理事、常務理事、副会長を経て 2019年 9 月から第 13 代会長に就任し、特に任期中に発生した新型コロナウイルス禍においてオンラインやハイブリッド方式を導入し、学会の研究活動、運営の継続性を担保しかつ発展させた。また女性や中堅・若手会員の役員への積極的登用、会員間の問題意識の共有などを目的とした「会員リレーコラム」などの取り組みは、学会の活性化に大いに貢献している。
以上により、金田氏の業績は、規程第7条第1項の第1,2,3号に該当し、孫福賞受賞に十分値するものである。

5.孫福賞を受賞して
このたび、孫福賞をいただきました法政大学の金田でございます。身に余る光栄と大変感謝感激しております。推薦していただきました理事の方々、選考に当たられました永和田委員長及び選考委員会の方々、そして受賞の決定をしていただきました杉原会長、三役の方々、理事会の皆様に厚く御礼申し上げます。
受賞のお話をいただいた時にまず率直に思ったことは、私のような者が受賞してもよいのかということです。私は運営面では確かにJUAMの委員長や理事を務め、会長もさせていただきましたけれども、研究面では例えば学会誌に投稿したといったことが全くなく、そういう方面ではほとんど貢献をしていません。こういう者が受賞してよいのだろうかということを思いました。
その後、今回の受賞理由で主に挙げられているのが、2019~21年度に私が会長を務めた時、ちょうどコロナ禍に見舞われて対面での活動がほとんどできなかった2020年の春頃からオンラインに切り替えて、JUAMの運営を継続させたといったところを評価していただいたことを知りました。ただこれも決して私が一人で行ったわけではなく、三役や理事、研究・研修委員会、会場校の関係者、各地区研究会の皆様など多くの方々のご尽力があったからこそ実現できたことです。そうした皆様のご貢献に感謝するとともに、その代表として賞をいただくのだという気持ちを噛み締めて、今日この場に立っています。

次に孫福さんの話をさせていただきます。
孫福さんが亡くなられてから20年余り経ちます。皆さんの中には、孫福さんにお会いになったことのある方はもう少ないかもしれません。私は2000年頃から当時の横田利久委員長(のちに会長)のもと研究・研修委員をしていた関係で、当学会のファウンダー(世話人)と呼ばれる方々、孫福さんのほか早稲田の村上義紀さんやICUの川上ひめ子さん、青山学院の宗像知機さんなどと少し交流がありました。2~3度、大人数で温泉に行くなど、ご一緒させていただいたこともありました。
当時私は40歳前後でしたから、ただひたすらお話を聴いているだけでしたが、その聴いているのがすごく楽しくて、どんな話だったかは今となってはあまり覚えていないのですが、知的好奇心を刺激されっぱなしだったことはよく覚えています。
もう一つ孫福さんとの関係では、同じ頃に桜美林大学大学院に大学アドミニストレーション研究科ができて、孫福さんは講師を務められていました。確か「教育と研究のマネジメント」という講義だったと思いますが、そこに私も科目等履修生として聴講していました。学長や理事長といったトップの方によるマネジメントやガバナンスの問題を早くも取り上げていて、他の大学と比較しながら検討する授業でした。
授業は新宿駅の南口にあるキャンパスで行われていました。孫福さんはいつも車で来られていましたが、終わった後の飲み会に孫福さんも必ずソフトドリンクを飲みながらお付き合いしてくださいました。孫福さんは日頃厳しい感じの印象の方なので、最初はとっつきにくいなというところもあったのですが、その時、にこにこしながら「こういう会合は必要だ。授業だけじゃなくてインフォーマルな会合が必要なんだ。両方ないと駄目なんだよ」ということをよくおっしゃっていました。それがとても記憶に残っています。
孫福さんのご功績として私が一番輝いていると思うのが、「教育から学習(支援)への転換」ということを主張されていたことです。詳しくは横田元会長が2007年度(第11号)の学会誌の巻頭言にそのことを書かれていますので、是非皆さんもお時間のある時に読んでいただきたいと思います。孫福さんのおっしゃっていたことを私流に解釈すると、「教育から学習支援に転換することで、教育は教員の専売特許ではなくなり、職員も実質的に関わることができる」ということでした。これは大変な慧眼であったと思います。
例えば、法人関係の部署に勤めている方にとっては、「教育」と聞いても自分が関わっているという意識は希薄かもしれませんが、「学習支援」ということであれば、学生の学ぶ環境を整備・充実化することが立派な学習支援になるのですから、大学職員の誰もが深く関わってきます。そういうことを目標にしていくということは、私たち大学職員にとってはとてもやりがいのあることだと思いますし、孫福さんはそれを20年以上も前から主張されていたということを、私たちは改めて思い起こさなければならないと強く感じます。

最後にJUAMに対する要望を述べさせていただきます。
先週末、法政大学で日本キャリアデザイン学会の第20回研究大会がありまして、私もペーパー会員ながら初めてオンラインで参加いたしました。ここではJUAMの運営にとって大いに参考になるお話がありました。
この学会の会員数は約1,100名で、JUAMとだいたい同じ規模です。キャリアデザイン学は教育学、心理学、経済・経営学が融合した学際的な分野であり、会員層としてもさまざまな専門領域の教員の方々がいらっしゃいますし、大学職員もキャリアセンターに所属する方を中心におおよそ1割くらいいると思います。また、企業からも人事部の方を中心に多くの会員がいらっしゃいます。
こうした多様な会員が集まった学会でどのような運営を目指しているかというと、とにかく多くの会員に研究会に参加してもらうにはどうしたらいいか、学会誌に多く投稿してもらうにはどうしたらいいか。会員には実務家の方も多く、発表や論文投稿がなかなか難しい状況があるので、その辺りの敷居をどう下げていくかということに努力されているということでした。
その時私が思ったのは、私たちJUAMも大学職員という殻を破って、大学職員以外の方々や他の学会と連携を強化したらどうだろうかということです。そういう中で改めて大学職員を見つめ直すことで視点や視座が変わり、何か新しいことが見えてくるかもしれません。
私自身は2024年5月末で法政大学を定年退職し、今は再雇用による嘱託という形になっているのですが、これからもこの孫福賞受賞を契機として、賞に恥じないよう一生涯学び続けていきたいと思います。本日はこのような名誉ある賞をいただきまして、深く感謝申し上げます。ありがとうございました。

<金田淳一氏プロフィール>
1962年生まれ。
1984年3月 法政大学法学部法律学科卒業、2010年3月 法政大学大学院経営学研究科経営学専攻修士課程修了。
1984年に学校法人法政大学に採用される。その後、多摩体育課、人事課、学務課、学務第二課などを経て2004年に学務課長補佐。2006年に学務課長、その後入学センター課長、広報課長、キャリアセンター課長、社会学部事務課長などを経て、2017年に多摩事務部次長。2018年に多摩事務部長、大学院事務部長を経て2024年5月に定年退職。同年6月から専門嘱託として総長室勤務。