■投稿者
大学行政管理学会会長 東洋大学 笠原 喜明
あけましておめでとうございます。年頭にあたり、ひとこと挨拶を述べさせていただきます。
2022年を振り返った時(それは10年後に2022年を振り返ったとしても)、一番印象に残っているのはロシア軍によるウクライナの侵攻を置いてないと思うところです。この戦争についてのコメントは控えますが、砲弾やミサイルを受けたウクライナ国内の街の様子を見るにつけ、私が高校2年生の時に受けた世界史の授業の中での新保先生のひと言が思い出されます。先生はこう仰いました。「北欧のスウェーデンが豊かなのは、150年以上戦争をしていないから」だと。世界史とは戦争の歴史と言い換えてもあながち間違いではなく、私自身、どの戦争でどちらが勝ったのかということを注視しがちでしたが、先生の言葉を聞いて「戦争とは何かを失うことなのだ。戦争とは損をすることなのだ」と考え直しました。あれから40年が経過し、スウェーデンは200年近く戦争をしていないことになります。今年は日本にとって「戦後78年目」になるわけですが、スウェーデンにとってナポレオン戦争が最後の戦争になったように、日本にとって「戦後」の起点が、今後も変わらず太平洋戦争が終結した1945年8月15日であり続けることを強く祈念する次第です。
一方、コロナはというと、早いもので2020年3月11日に世界保健機関(WHO)がパンデミックを宣言して以来、既に3年近い年月が経過しました。そして同じく早いもので、私が大学行政管理学会(以下、「JUAM」)の会長を務めている第14期も、既に任期の3分の2を経過しました。JUAMの2022年を振り返ると、やはり一番の出来事は3年ぶりに対面で開催できた研究集会だったと思います。この研究集会は対面とオンラインのハイブリッド方式で開催されました。運営に当たった関係者の皆様、会場を提供いただいた成蹊大学の皆さまに、改めて深く敬意と感謝の意をささげたいと思います。今後のJUAMの活動は、間違いなくこのハイブリッド方式が基本的な運営形態になるでしょう。2月以降各地区で開催される研究会もハイブリッド方式を予定しているものが多く、ニューノーマルと感じております。
会長職を務めさせていただいた1年4カ月の間、強く感じたのはJUAMの組織としての強化の必要性です。サスティナビリティの向上と言い換えても良いかもしれません。例えば地区別研究会の運営において同地区の理事や運営委員が諸事情により思うように動けなかった場合、研究会の活動は一気に停滞します。もし2年間停滞したとすれば、それを回復させるのには倍の時間がかかるでしょう。地区別研究会の重要性を考えると、研究会間の相互補完的な体制の整備が必要と考えますし、理事や運営委員の人選も、最低でも先の先(4年程度先)を見据えて人材確保に取り組んでいかないと、スムーズな継続は難しいと感じています。会長である自分に何ができるのか、模索する日々です。
また、広報委員会や国際委員会といった学会の常設委員会についても、より体制を整備していくことが持続可能性を高めることになります。常設委員会の基本的な役割は明確であるものの、重点とすべき具体的課題やその解決方法は大きく変化していますので、若手や女性の意見も取り入れつつ、ここでも先の先を見た取り組みが必要です。これらについては、現在、杉原副会長を中心に取り組んでいただいています。
さらに現状を維持するだけでは組織は継続せず、一層の向上を目指さなければいけません。学会の社会的プレゼンスの向上や、学会のリソースの有効活用などを目指して2022年9月に「三役タスクフォース」を立ち上げたことは記憶に新しいのではないでしょうか。こちらは岡田副会長を中心に活動を始めています。
どの取組みも長期的に取り組んでいく必要があり、まさに次の次を考えながら、ということになります。JUAM会員の減少傾向は対面の活動が復活してきた2022年になり多少鈍化傾向にあるものの、残念ながら未だ増加に転じたわけではなく、今後も予断を許しません。残りの任期の間、この点についても取り組んでまいりますので、引き続きご支援ご協力の程、宜しくお願い致します。
末筆になりますが、本年がJUAMにとって、また会員諸氏と所属する大学等にとりまして、明るい一年となりますよう、心より祈念申し上げます。