(関東地区研究会主催)2022‐2023年度第1回関東地区研究会「日本における外国学習歴・資格認証(FCE)の現状と課題」

■開催日時:2022年11月19日(土)14:00~16:15
■開催場所:オンライン(Zoomミーティング)
■申込人数:59名
■内容・タイムスケジュール
司会 :豊島 美弥子(関西学院大学 学長室 次長、
          国際教育・協力センター委員)
14:00~14:05  開会
14:05~14:20 「『FCEに関する実態調査』に見る大学の諸相」 
        赤松 茂利(早稲田大学 国際部国際課)
14:20~14:45 「FCEと日本の留学生リクルーティング・アドミッションの
        課題」太田 浩(一橋大学 全学共通教育センター 教授)
14:45~15:10 「外国成績評価(FCE)をめぐる世界的動向とユネスコによる 
        東京規約の意義」芦沢 真五(関西国際大学副学長 国際コミュ
        ニケーション学部 教授)
15:15~15:40 「留学生受入れにおけるFCEの必要性と実践事例」
        白石 勝己(公益財団法人アジア学生文化協会 理事長)
        星 明廣(公益財団法人アジア学生文化協会 国際教育支援事業
            部長)
15:40~16:10 質疑応答
16:10~16:15 閉会

■概要
 外国学習歴・資格認証(Foreign Credential Evaluation/Recognition: FCE)とは、外国において付与された学位や学習歴に対し、それを所有する人物を受け入れようとする国の教育制度や資格と照らし合わせて同等性を評定する行為を指す。今日では国際流動性の高まりとともに、複数の国をまたいで教育を受けるケースも珍しくなく、評定の多様化・複雑化が進んでおり、大学は正しい知識に基づく公正なFCEを行う責任が、かつてなく大きくなっている。

 こうした課題を背景に、まず、早稲田大学・赤松より、JUAMが2022年5~6月に全国約700校の大学を対象に実施した調査アンケート「外国学習歴・資格認証(FCE)に関する実態調査」の詳報が行われた(回答数:96件)。調査に基づき、7割以上の回答者がFCEを「困難」「やや困難」と感じていること、評定は8割以上が「12年間の中等教育課程を修了(見込)か」を判断軸とする課程年数主義に基づいており、出身校のアクレディテーションや当該国のNational Qualification Framework(NQF)まで追跡する土壌が整っていないこと、東京規約への適応やデジタル学習歴証明の受領といった今日的課題に対応する大学は1割程度であることなどを明らかとした。

 次に、一橋大学・太田教授より、日本のFCEと海外リクルーティング・アドミッションの課題が発表された。これまで我が国でFCEが重要視されてこなかった原因として、国内入試に依存し渡日前入学許可が普及していないこと、依然として留学生入試が「亜流」として見られていること等の実情が挙げられ、留学生の量的拡大、質的向上と出自国の多様化を促進するためにはFCEが重要であるとの認識が語られた。さらに、我が国ではNQFが未策定であること、大学に厳格な定員管理が求められていること、リクルーティング・アドミッションの専門家(職)が確立されていないこと等、大学業界全体として克服すべき課題が多い点にも言及された。

 関西国際大学・芦沢教授は視点を世界に広げ、カナダ、オーストラリアの事例を用いて、それぞれの国がどのようにFCEを実施しているかの具体的なメカニズムを紹介した。また、これらの国々では外国学習歴を評価する国際的な「ものさし」として、NQFが整備され機能している実態が明らかにされた。さらに話は東京規約、証明書電子化とマイクロクレデンシャルにも及び、世界的動向の紹介と、これら領域で大きな後れをとる我が国に対する課題提起が行われた。

 最後に、アジア学生文化協会(ABK)の白石理事長ならびに星氏より、FCEの実践事例が紹介された。白石理事長からは日本の大学入学資格の法令解釈、ならびにそれを根拠に大学人がどのような観点からFCEを実質的に遂行すべきか、具体的な方法論が語られた。さらに星氏によるFCEのデモンストレーションでは、大学入学資格の関連法令の表層的な理解だけでは、正しい評定結果にたどり着けないFCEの困難性・複雑性を、サンプルとなる証明書を用いて丁寧に紐解いていった。

 終わりに、関東地区研究会代表として学習院・宮澤より、各発表者のポイントに加え、「FCEは伝統的な入試業務の範疇に収まらない。海外では高度専門職。日本の大学の意識改革が必要」という本研究会のまとめの引用から、それでは一体どうしたらその意識改革ができるのかは他の分野でも共通する大きな大学行政としての課題であり、JUAM全体の課題とも照らし合わせて今後実践に移していくことが必要であるというコメントを総括として述べられた。

■参加者アンケート(一部抜粋)
・調査によって、日本の大学の現状と問題点が可視化されていました。
・東京規約の方向に動かないまま、日本の高等教育の相対的地位がますます低下していくのを歯がゆく感じます。
・日本の入試に関するご意見は、まったく同感します。海外からの直接入学が発展しないとなかなか日本に留学生が集まらない(限定的な国からしか来ない)現象は続くと思います。
・根拠法令から実際のケーススタディまで、非常に勉強になりました。
・この分野に知己が深い方が多く参集されていることが理解できた。
・どの発表もとても現実的で的確、そして細かい部分で、新しい情報を得ることができました。

■関東地区研究会:代表者/学校法人学習院 宮澤文玄・投稿者/早稲田大学 赤松茂利

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