大学行政管理学会共催の「第12回大学のグローバル戦略シンポジウム(UGSS2018)」が2018年11月9日、経団連会館国際会議場で開催された。当学会は、大学の実務者の学びの場、研究の場としての有益性から、第1回UGSSより共催している。
今年度のテーマは「知の進化と大学の未来投資」。知の深層に蓄積された価値創造を実現するための卓越した経営力を有する大学の事例を紹介し、知の進化過程における大学の未来投資のあり方を展望した。
義本博司氏(文部科学省高等教育局長)の来賓挨拶に続き、第1部の基調講演では、
ウェイ・シー氏(香港科技大学学長)が「イノベーション時代のHKUST(香港科技大):社会貢献、創発、期待度」と題し、コミュニティ、地域、グローバル社会に貢献する人材を終結させ、HKUSTにおける重層的なイノベーションの創発力を明示した。さらに新進気鋭の大学として注目されているHKUSTは、イノベーション支援のための戦略分野を特化し、資源の集中による新たなアプローチを展開していることを強調した。コメンテーターの大西隆氏(豊橋技術科学大学学長)からは、日本の大学を取り巻く環境を踏まえ、HKUSTとの比較において課題提供を行った。
また特別講演では、カウシーク・バタチャーヤ氏(カリフォルニア工科大学バイスプロボスト(研究推進担当))が、「Excellenceに挑むCaltechの戦略的投資と支援メカニズム」と題し、Caltechが社会的インパクトをもたらす新技術を創発することに注視し、学術領域からの創発プロセスを解説した。さらに、Caltechの際立つ特徴である特定分野の優位性と協働的な環境が、戦力的投資を促し、ハイリスクと困難な取り組みを受容するメカニズムを明らかにした。コメンテーターの土屋恵一郎氏(明治大学学長)からは、知の進化過程における先端的研究において、戦力的投資の課題とその方策の必要性において提示された。
第二部のパネルディスカッションでは、岩本健吾氏(文部科学省大臣官房文部科学戦略官(高等教育担当))が進行役を務め、第一部の登壇者のほか桑原一利氏(青山学院常務理事)が登壇。本シンポジウムのテーマにおいて、日本、米国、香港の高等教育制度と政策を背景に、イノベーションの創発を促す豊富な事例を紹介し、活発な議論を行った。さらにSociety5.0に対応する大学が、教育・研究をどのように変革していくか、大学間連携をはじめ企業との連携も視野に参加者も交え、多くの質問や意見が出された。
その後行われたレセプションでは、JUAM会長が乾杯の挨拶に立たれた。永和田会長からは「知の進化と大学の未来投資」というテーマで開催された今回のシンポジウムは、これからの大学の将来を見据えたテーマであり、様々な示唆に富んだ議論を頂き大変有意義なものとなった。UGSSは毎回、内外の第一線の講師をお招きし、多彩な刺激的な学びの場を提供いただいており大学関係者の間で定着し大きな影響力、刺激を与えているのではないかと思う。
大学行政管理学会は新たな時代の大学改革を担える力を備えるべく1360名を超える大学職員がプロフェッショナルとしての大学経営管理職の確立を目指し、全国各地で研究研鑽の取り組みを進めてきている。一昨年20周年を迎え、法人格も取得した。今後はこれまでの積み重ねを基盤にしながら、10年後、20年後の大学像を見据えて大学の発展に寄与したいと考えている。
今後もこのUGSSが時宜を得たテーマで開催され、多くの大学改革を担う教職員が集い、研鑽し、実践レベルのソリューションを創出する場として発展することが期待されており、大学行政管理学会としても、引き続き共催団体の一つとして微力を尽くしたいと述べ、参加者へのメッセージとした。