2010年度事業計画

2010.3.12. 第40回理事会

2010年度 大学行政管理学会 事業計画

1.はじめに
 グローバル化と知識基盤社会の進行は、新しい「知」の創造を必要としており、教育・研究を基本的使命とする高等教育への期待と要求はたいへん大きなものになっています。高等教育機関が公共的機関としてその責務を果たすことが一層重要になっていますが、その一方で、高等教育をめぐる環境は厳しさを増しています。4年制私立大学の46.5%が定員割れを起こし、在学生が定員の50%に満たない大学は31校に達しています。私立短大は一層厳しく69.1%が定員割れとなっています(2009年度私学事業団調査)。さらに、募集停止となる4年制私大は5校となっています。また、長引く世界的不況は学生の就職を直撃し、内定率の低下や内定取り消しなど深刻な問題となっています。とりわけ内定率の低下は私学で大きく、人材育成という高等教育機関としての機能にも影響を与えています。

 高等教育の政策動向も高等教育機関の在り方に大きな影響を与えています。中教審答申「学士課程教育の構築に向けて」(2008.12.24)では、各大学が入学者受入れ、教育課程編成、学位授与の三つの基本方針を明確にすることとともに、大学教育の質保証を自主的・自律的に自己管理できる仕組みづくりを求めています。また、大学院教育も各課程の趣旨に沿った在り方の確立を通じて実質化が求められています。このように、2008年9月に中教審に諮問された「中長期的な大学教育の在り方」に沿って、大学教育の構造転換にむけた検討が急テンポで進行しています。さらに、2009年9月の政権交代により、高等教育や科学技術政策に関わる予算配分が大きく変わる可能性があり、高等教育の政策動向については引き続き注視しなければなりません。

 こうした状況のもとで大学職員に焦点をあてると、環境変化に対応して大学職員が果たすべき役割への期待と要求もますます高まっています。「学士課程教育」答申では教職員の職能開発についても提言されています。職員は高度化、複雑化する課題に対応することに加え、新たな領域での業務需要も発生しており、それらは教員と職員という従来の区分にとらわれない組織体制の在り方を検討していくことが重要であるとしています。そして、各大学が学内外におけるSDの場や機会の充実に努めることが必要であり、教員と職員の協働関係を一層強化するため、SDを推進して専門性の向上を図り、教育・経営など様々な面で、その積極的な参画を図っていくべきであるとしています。

 このようにFDと並んでSDへの関心やニーズがたいへん高まっているもとで、また、高等教育をめぐる環境が厳しさを増している中で、日本最大のSD団体である本会が、それぞれの大学、さらには日本の高等教育全体の発展のために貢献し、積極的役割を果たすことが求められています。現在の会員構成、さらには 2008年11月に実施した「大学行政管理学会の自己点検・評価に資する調査」結果をふまえ、2010年度の事業計画を以下のように編成しました。

2.本会のミッションとビジョン
本会のミッションは、「『大学行政・管理』の多様な領域を理論的かつ実践的に研究することを通して、全国の大学横断的な『職員』相互の啓発と研鑽を深める」(設立趣旨文)ことです。これを実現するために、第6期執行部からの基本路線を継承し、今期は次のように発展させたビジョンを掲げます。

 第一に、大学の行政管理、経営管理、教学管理において、実践的・理論的に研究・交流を重ねる中で研究成果を生み出し、大学運営のプロフェッショナルであるアドミニストレーター像を追求・確立することです。

 第二に、全国各地・各大学におけるSDの取り組みを支援し、職員を励まし、そのレベルアップに貢献することです。同時にSDについて積極的に情報発信や意見発信を行い、高等教育政策の策定に対して必要な役割を果たすことです。

 第三に、海外のアドミニストレーターと交流し、大学の国際通用性強化に貢献することです。

3.研究活動の一層の発展本会の設立趣旨である大学行政・管理の多様な領域の実践的・理論的な研究を推進するために、2009年度より実施した研究会補助費の増額を生かし、地区別・テーマ別研究会を定期的・継続的に開催します。また、各研究会の成果や、個々の会員の自発的な研究活動の成果について、公表や会員への還元を可能にする支援を充実するために、次のような取り組みを行います。

(1) 地区別・テーマ別研究会の活動紹介による会員の参加促進
(2) 地区別研究会の安定的開催
(3) テーマ別研究会の安定的開催と地区横断的な登録会員の受入れ
(4) テーマ別研究会の設置地域外開催と複数の研究会による共催
(5) 研究結果・成果の即時公開(学会HP)
・研究成果のPDF化の促進、「研究会報」の発行
・研究会活動報告のHP入力促進
(6) 査読体制の強化を含む学会誌編集発行体制の充実
(7) 研究成果刊行の出版支援、報告書の印刷製本支援
(8) SDプログラムの具体化にむけた検討
(9) 他の団体との共同研究

4.会員の拡大と育成、全国各地における本会活動の積極的展開
全国の大学職員の2%に相当する1,400名規模の会員と、全国の大学(773校)の半数に会員が在籍する状況をめざし、各大学におけるSDの取り組みへの支援を含めて、全国各地での本会活動を積極的に展開します。そして、大学運営のプロフェッショナルであるアドミニストレーターたりうる大学職員を育成するために、次のような取り組みを行います。

(1) SDプログラムの検討を通じた全国各地での会員拡大
(2) 国公立大学在職者の会員拡大策の検討
(3) 女性会員の拡大策の検討
(4) 本会HPの積極活用策の検討
(5) 全国の大学への本会活動案内の送付
(6) 中堅・若手会員の研修機会や活動支援の拡大強化
(7) 若手会員の各研究会等の世話人への抜擢
(8) 地区研修会・講演会や地域の大学に対する講師(本会役員等)の積極的派遣
(9) 本会役員による他組織主催講演会・研修会講師の積極的引き受けと講演時のPR
(10) 他の高等教育関連団体・機関等との共催による研修機会の拡大

5.国際交流の推進国際的な組織や海外の大学アドミニストレーターとの共同の研究・交流を推進するため、次のような取り組みを行います。

(1) AUA(Association of University Administrators)総会への会員の派遣
(2) IMUA(International Meeting of University Administrators)大会への会員の派遣
(3) 海外の大学アドミニストレーターによる講演等の開催、共催、後援
(4) KAUA(Korean Association of University Administrators)総会への役員の派遣
(5) 中国・台湾におけるアドミニストレーター団体の状況調査と交流の可能性の追求

6.国立大学マネジメント研究会をはじめ高等教育研究関係団体との連携・協力の促進関係団体と連携・協力して、高等教育を担う大学職員の育成に資する様々な取り組みを行います。

(1) 国立大学マネジメント研究会との具体的な連携・協力の推進
(2) その他高等教育関係研究団体との連携・協力関係の模索

7.広報体制の整備と広報活動の充実会員相互間、および本会と外部とのインターフェースを豊富化するために、次のような取り組みを行います。

(1) 本会HPの積極活用策の検討(再掲)
(2) マスコミ等情報媒体への積極的な情報発信
(3) 所属大学等に対する本会活動の情宣と経費支援をはじめとする便宜供与の協力依頼

8.本会の管理・運営体制の整備と活動基盤の充実本会規模の拡大や事業の多様化に対応しつつ、長期的・安定的に本会活動を継続することを目的として、次のような取り組みを行います。

(1) 各理事の役割および責任体制の明確化
(2) 各委員会の役割の明確化と機能強化
(3) テーマ別研究会運営の指針の作成
(4) 本会HPの運営管理体制の整備
(5) 自己点検・評価結果をふまえた改善課題の検討
(6) 財政の安定性の確保
(7) 本会OBとの連携の検討
(8) 事務局業務執行体制の整備・強化

9.理事会・常務理事会の開催予定(1) 理事会:9/3、2011/3/11
(2) 常務理事会:5/14、7/16、9/3、10/22、2011/1/7、3/11

10.第14回定期総会・研究集会

9月4日(土)・5日(日) 國學院大學

以 上