2011年度事業計画

2011.3.11. 第42回理事会

2011年度 大学行政管理学会 事業計画

1.はじめに

 グローバル化と知識基盤社会の進行は、新しい「知」の創造を必要としており、その担い手の育成(人材育成)が国の活力や発展の基礎となることから、高等教育への期待はたいへん大きなものになっています。しかし、2007年のOECD教育調査によれば、GDPに占める公的な教育支出の割合は3.3%で28カ国中最下位であり、高等教育も各国平均の半分となる0.5%です。他方、全教育費に占める私費負担の割合は33.3%で第四位、高等教育は67.5%と各国平均30.9%の二倍となっています。現政権は「GDP比5.0%以上」を政策としていますが、教育に対する公的負担を増加させることは重要な課題です。このような中で、高等教育をめぐる環境は依然として厳しさの中にあります。前年度に比して改善したとはいえ4年制私立大学の38.1%、私立短大の62.5%が定員割れとなっています(2010年度私学振興・共済事業団調査)。定員割れのポイントが改善した理由は募集停止や入学定員の削減等であり、公的負担の拡大は喫緊の課題です。

 高等教育の政策動向は、2005年1月にだされた中教審答申「我が国の高等教育の将来像」で示された考え方にそって具体化が進んでいます。各大学が個性・特色に基づき機能別に分化していくことを想定し、2008年12月の中教審答申「学士課程教育の構築に向けて」では、教育課程中心の考え方に従って、各大学が入学者受入れ、教育課程編成、学位授与の三つの基本方針を明確にすることを求めました。また、公的な質保証システムを整備し、教育情報の公表の促進を図る学校教育法施行規則等の改正も行われました。さらに、2010年7月には日本学術会議が「大学教育の分野別質保証の在り方について」を報告したように、質保証の取り組みは機関別評価から分野別評価へと発展してきています。同時に、質保証を支えるためには安定的な財政基盤が不可欠であり、大学の基盤的経費への支援、大学教育改革への支援、学生への経済的支援が財政支援の方向性としてだされています。中教審に諮問されている「中長期的な大学教育の在り方」についてもすでに第四次の報告に至っており、高等教育の政策動向について常に注視することが求められます。

 こうした状況のもとで大学職員に焦点をあてると、環境変化に対応して大学職員が果たすべき役割への期待と要求もますます高まっています。「学士課程教育」答申では、職員業務の高度化、複雑化や、新たな領域での需要の発生に対して、教員と職員という従来の区分にとらわれない組織体制の在り方として検討する必要性が提言され、また、教職協働や職員の専門性向上のためにSDの場や機会の充実、教育・経営など様々な面で積極的な参画を図っていくことの重要性が指摘されています。さらに、近年の採用状況に見られるように、大学職員への社会的関心は高くなっており、このことは改めて業務に対する自覚と責任の重さとして受け止める必要があります。

 このようにFDと並んでSD、さらには大学職員自体への関心がたいへん高まっているもとで、また、高等教育をめぐる環境が厳しさを増している中で、日本最大のSD団体である本会が、それぞれの大学、さらには日本の高等教育全体の発展のために貢献し、積極的役割を果たすことがこれまで以上に求められているといっても過言ではありません。本会の活動の到達点や現在の会員構成をふまえ、2011年度の事業計画を以下のように編成しました。

2.本会のミッションとビジョン

 本会のミッションは、「『大学行政・管理』の多様な領域を理論的かつ実践的に研究することを通して、全国の大学横断的な『職員』相互の啓発と研鑽を深める」(設立趣旨文)ことです。これを実現するために、第6期執行部からの基本路線を継承し、今期は次のように発展させたビジョンを掲げます。

 第一に、大学の行政管理、経営管理、教学管理において、実践的・理論的に研究・交流を重ねる中で研究成果を生み出し、大学運営のプロフェッショナルであるアドミニストレーター像を追求・確立することです。

 第二に、全国各地・各大学におけるSDの取り組みを支援し、職員を励まし、そのレベルアップに貢献することです。同時にSDについて積極的に情報発信や意見発信を行い、高等教育政策の策定に対して必要な役割を果たすことです。

 第三に、海外を含めて共通の目的をもつ多様な組織や団体と交流することを通じて、アドミニストレーターとしての通用性や視野の広がりをもつことです。

3.研究活動の一層の発展

 研究会開催数、研究集会での発表数、学会誌への掲載数など着実に増加しています。本会の設立趣旨である大学行政・管理の多様な領域の実践的・理論的な研究を一層推進するために、2009年度より実施した研究会補助費の増額を生かし、地区別・テーマ別研究会を定期的・継続的に開催します。また、各研究会の成果や、個々の会員の自発的な研究活動の成果について、公表や会員への還元を充実させるために、次のような取り組みを行います。

①地区別・テーマ別研究会の活動紹介による会員の参加促進

②地区別研究会の安定的開催

③テーマ別研究会の安定的開催と地区横断的な登録会員の受入れ

④テーマ別研究会の設置地域外開催と複数の研究会による共催

⑤研究結果・成果の即時公開(学会HP)

・研究成果のPDF化の促進、「研究会報」の定期的発行

・研究会活動報告のHP入力促進

⑥査読体制の強化を含む学会誌編集発行体制の充実

⑦研究成果刊行の出版支援、報告書の印刷製本支援

⑧SDプログラム検討委員会最終報告の提言内容の具体化

⑨他の団体との共同研究

4.会員の拡大と育成、全国各地における本会活動の積極的展開

 全国の大学職員の2%に相当する1,500名規模の会員と、全国の大学(778校)の半数に会員が在籍する状況をめざし、各大学におけるSDの取り組みへの支援を含めて、全国各地での本会活動を積極的に展開します。そして、大学運営のプロフェッショナルであるアドミニストレーターたりうる大学職員を育成するために、次のような取り組みを行います。

①全国の大学への本会活動案内の送付

②中堅・若手会員の研修機会や活動支援の拡大強化

③女性会員の拡大ならびに各研究会等の世話人、理事等への登用

④国公立大学在職者の会員拡大

⑤地区研修会・講演会や地域の大学に対する講師(本会役員等)の積極的派遣

⑥本会役員による他組織主催講演会・研修会講師の積極的引き受けと講演時のPR

⑦若手会員の各研究会等の世話人への抜擢

⑧他の高等教育関連団体・機関等との共催による研修機会の拡大

⑨本会HPの積極的活用

5.国際交流の推進

国際的な組織や海外の大学アドミニストレーターとの共同の研究・交流を推進するため、次のような取り組みを行います。

①AUA(Association of University Administrators)総会への会員の派遣

②AUAスタディツアーの受け入れと交流(2011.11~12頃)

③IMUA(International Meeting of University Administrators)大会への会員の派遣

④KAUA(Korean Association of University Administrators)代表の定期総会への招聘の検討

6.国立大学マネジメント研究会をはじめ高等教育研究関係団体との連携・協力の促進

関係団体と連携・協力して、高等教育を担う大学職員の育成に資する様々な取り組みを行います。

①国立大学マネジメント研究会との具体的な連携・協力の推進

②その他高等教育関係研究団体との連携・協力関係の模索

7.広報体制の整備と広報活動の充実

会員相互間、および本会と外部とのインターフェースを豊富化するために、次のような取り組みを行います。

①本会HPの運用方法の安定化と積極活用

②マスコミ等情報媒体への積極的な情報発信

③所属大学等に対する本会活動の情宣と経費支援をはじめとする便宜供与の協力依頼

8.本会の管理・運営体制の整備と活動基盤の充実

本会の規模拡大や事業の多様化に対応しつつ、長期的・安定的に本会活動を継続することを目的として、次のような取り組みを行います。

①各理事の役割および責任体制の明確化

②各委員会の役割の明確化と再編の検討

③テーマ別研究会運営の指針の作成

④本会HPの運営管理体制の整備

⑤研究活動を支援・強化する財政運営と財政安定化の両立

⑥本会OBとの連携のあり方の検討

⑦事務局業務執行体制の整備・強化

9.理事会・常務理事会の開催予定

①理事会:9/2、2012/3

②常務理事会:5/13、7/15、9/2、10月、2012/1月、3月

10.第15回定期総会・研究集会会場校

9月3日(土)・4日(日) 金城大学

【資料】学会活動の推移

以 上