2013年度事業計画

2013.3.16 第48回理事会

2013年度 大学行政管理学会 事業計画

1.はじめに

 知識基盤社会の進行に伴い高等教育への期待はますます高まってきていると同時に、「大学設置認可の在り方の見直しに関する検討会」が設置されたように大学に対する社会の目も厳しくなってきています。

 第二次世界大戦後に誕生した日本の大学の新たな枠組みは、幾度も議論されながらも基本的には現在も維持されているといえるでしょう。新制大学の制度的課題、戦後の産業・経済の成長、大学進学率の向上、私立大学の成長、そして、大学紛争などの事象を踏まえ、大学の種別化や管理運営等に触れた三八答申や四六答申は、現在の高等教育政策に少なからず影響を与えていると思われます。

 近年でも、大学設置基準の大綱化以降の高等教育システムの構造は、著しい変化をみせています。18才人口が減少を迎えるなか、大学の新設、短大の4年制への改組、新学部・学科の増設等の動きが現れ、大学進学率の更なる向上もみられました。設置認可についても、規制緩和政策を受け事前規制から事後チェックへと行政手法も変化しました。これらの動きと並行して、教育の質保証の問題も大きな課題となっています。2012年には、経済同友会から提言「私立大学におけるガバナンス改革」(2012年3月)が発表されるとともに、中央教育審議会からは答申「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて」(2012年8月)が公表されました。これらは、大学人自らが率先して大学の本質を見つめ直し、各大学の理念に基づく能動的な対応に猶予がない状態ともいえるのではないでしょうか。

 日本の成長の源泉は“人”にあります。情報社会、かつ、グローバルな環境となっている現在の日本は、多様な価値観の中、未来を担う人材をいかに輩出するかという重要な課題を抱えています。その役割を担う大学は、限られた資源の中で最大限の学習効果を生み出していけるよう様々な工夫、改善、または、変革を行う必要があります。

 本会は、日本の高等教育の未来に対して貢献したいという志をもった方々の集まりでもあります。その志を具現化していくには、高等教育のあり方を多様な視点で研究することも必要となります。同時に、そこから得られた知見を大学経営や教育研究に活かす取り組みも必要となるでしょう。これらを実践していく人材を生み出していくことも、本会に課せられた使命の一つといえるでしょう。

 大学を取り巻く環境の大きな変化を背景に、大学職員が果すべき役割や期待もますます高まっています。これらの状況に応じて、本会の会員一人ひとりが本会に求めるニーズも多様なものとなっています。会員一人ひとりが、日々研鑽を積む環境を整備するため2013年度の事業計画を以下のように編成しました。

2.本会のミッションとビジョン

 本会のミッションは「『大学行政・管理』の多様な領域を理論的かつ実践的に研究することを通して、全国の大学横断的な『職員』相互の啓発と研鑽を深める」(学会設立趣旨文)ことです。孫福弘初代会長は設立発起人代表挨拶において、「我が国の大学は教育・研究面と管理運営面の改革があいまってはじめて国際競争力を持てる」とした上で、管理運営面における問題点として「大学という組織のマネジメントを総体で見ると、コンセプト上でも実行レベルでもまだ十分には近代化が成し遂げられていない」、「人的・制度的に見ると高度のプロフェッショナルな能力を持った行政管理の専門家が育っていない」ことを指摘しています。

本会の創設に携わった先達の想いを今一度共有し、さらに次世代への足がかりとして「プロフェッショナルとしての大学行政管理職員の確立」を目指します。

3.研究活動の一層の発展

 会員一人ひとりの主体的な研究活動を促進し、地区別・テーマ別研究会の活動、研究集会での発表および学会誌への掲載が積極的に実施されるよう、各研究会の成果や個々の会員の研究活動成果などを会員へ還元させ、より充実した研究活動を促進するため、次のような取り組みを行います。

①各地区への情報提供(情報の偏りの解消)

②地区別・テーマ別研究会の活動紹介による会員の参加促進

③地区別研究会の安定的開催と「地域の力」活性化

④テーマ別研究会の安定的開催と地区横断的な登録会員の受け入れ

⑤テーマ別研究会の設置地域外開催と複数研究会による共催

⑥研究結果・成果の迅速な公表

⑦学会誌の充実

⑧研究成果刊行の出版支援

⑨SDプログラム検討委員会最終報告の提言内容の具体化

⑩他団体との共同研究

⑪高等教育関連文献紹介の充実

4.会員の拡大と育成、全国各地における本会活動の積極的展開

 全国の大学職員の2%に相当する1,500名規模の会員と全国の大学(780校)の半数に会員が在籍する状況を目指すとともに、地域による偏り、男女構成比等を是正し、積極的な活動を生む環境を整備するため、次のような取り組みを行います。

①学会創設の精神の継承

②全国の大学に向けた本会活動の広報

③若手・中堅会員の活動支援

④女性会員の拡大と「女性の力」による本学会の新たな展開

⑤国公立大学在職会員の拡大

⑥研究会主催の研修・講演会や地域大学に対する講師派遣

⑦他組織主催の研修・講演会に対する講師派遣と講演時の学会PR

⑧他の高等教育関連団体等との共催による研修機会の提供

5.国際交流の推進

日本国内に留まらない様々な体験の場を提供するために、次のような取り組みを行います。

①AUA(Association of University Administrators)総会への会員の派遣

②KAUA(Korean Association of University Administrators)との交流

③IMUA(International Meeting of University Administrators)等、その他海外の大学アドミニストレーターとの交流支援

6.高等教育研究関係団体等との連携・協力の促進

関係団体と連携して、大学アドミニストレーターの育成に資する様々な取り組みを行います。

①大学マネジメント研究会との連携・協力の強化・推進

②その他高等教育関係研究団体との連携・協力関係の模索

③プロフェッショナル職員を育成する大学院等との連携・協力

7.広報体制の整備と広報活動の充実

会員の学会活動支援、会員への情報提供、会員同士のコミュニケーション、プロフェッショナルとしての大学アドミニストレーターの社会的認知度の向上のため、次のような取り組みを行います。

①所属大学等に対する本会活動の情宣と経費支援をはじめとする協力依頼

②本会ウェブサイトの内容の充実および利便性の向上

③本会ウェブサイトの一部英文化

④マスコミ等情報媒体への積極的な情報提供

8.本会の管理・運営体制の整備と活動基盤の充実

本会の規模拡大や多様化する事業に対応し、長期的・安定的に本会活動を継続することを目的として、次のような取り組みを行います。

①東日本大震災復興活動支援の持続的取り組み

②理事と委員会の連携強化

③研究会活動支援のための予算措置

④役員改選期の総会・研究集会の会場校の見直し

⑤本会OBとの連携のあり方の検討

9.理事会・常務理事会の開催予定

①理事会:9/6(金),9/7(土),9/8(日),2014年3月

②常務理事会:5/18(土),7/20(土),9/6(金),10月,2014年1月,3月

10.第17回定期総会・研究集会

日時:2013(平成25)年9月7日(土)・8日(日)

場所:東京電機大学 東京千住キャンパス

以 上