2016年度事業計画

2016.3.12 第58回理事会

2016年度事業計画

はじめに

 2016年度は、JUAMにとって創立20周年という節目の年を迎える。これまでのJUAMの歩みを振り返りつつ、高等教育、大学行政管理、職員業務、そしてJUAMの次の10年を展望する年としなければならない。
 JUAM創立時と高等教育や大学の管理運営をめぐる環境は大きく変化した。また次の10年を見通しても、その環境はますます厳しくなることが容易に想定される。こういう時こそ、職員が大学の未来を切り拓く要となることが求められており、JUAMの研究活動、研鑽・研修の取り組みは、ますます大きな意義を有することになる。
 2016年度は、日本の大学の未来を切り拓く画期となるよう、志を高く持ち、旺盛な学会活動を進めていくこととする。

1.大学をめぐる環境変化と大学行政管理学会

 中教審より「大学のガバナンス改革の推進について」(審議まとめ)(平成26年2月12日、大学分科会)が提起され、それを受けて「大学運営の一層の改善・充実のための方策について」が同大学教育部会で議論されている。この中では大学教員・事務職員を「職員」と括り、職員のあり方見直しを迫る議論が進行しており、とりわけ「専門的職員の配置」「SDの義務化」「事務組織の見直し」の提起は、今日の厳しい大学運営において、学長のリーダーシップが発揮できる環境を形成していくうえで、職員への期待の高まりを示すものと言える。しかし、それは同時に、職員の現状や持っている資質や能力が、その期待に十分応え得るものとはなっていないということに他ならない。
 大学行政管理学会は、プロフェッショナルとしての大学行政管理職員の確立を目指して、大学行政管理の多様な領域を理論的かつ実践的に研究することを原点として取り組んできた。大学をめぐる環境変化を踏まえつつ、この学会創立以来、20年で何がどこまで進んだのか、何が新たな課題であるかを見据えて、新たな学会のありよう、職員のありよう、大学のありようを考える契機としなければならない。その際、マネジメントをチェックする機能を有するガバナンスについて、マネジメントにおける職員の役割とともに、ガバナンスにおける職員の役割を明らかにする必要がある。
 日本の大学は重要な局面を迎えており、大学の将来を担い得る人材を輩出するために、職員の研究・研鑽を多様かつ活発に行うことがきわめて重要であり、JUAMの20年の蓄積を活かしてSDをさらに進めていくことが課題となる。

2.職員の研究・研鑽とその実践を、日本の大学改革のエネルギーに

 そうしたなかで、学会創立以来掲げてきた「大学行政管理学」の確立や深化をどう展望するかが問われている。JUAMにおいては、「大学行政管理学」という学問領域確立へのチャレンジの一つの取り組みとして、前期(第10期)より「叢書」発刊計画を模索しているところである。
 同時に、この厳しい大学経営環境下において求められる日本型の大学アドミニストレータ像をどう描くか、そうした人財の育成が急務である。そのための実践や研究にもとづく相互研鑽はきわめて重要であり、JUAMにおける会員の成果発表、研究支援は大きな意義を有する。とりわけ、地区研究会、テーマ別研究会の活性化とともに、それらの成果をまとめ共有していくことが必要であり、そのためにも、研究データベースの充実やJUAMホームページのいっそうの充実は喫緊の課題である。
 日々の大学における様々な営みや実践を鋭く観察・研究し、学生や教育研究、社会貢献のために活かすことが重要である。2016年度は研究会活動の活性化を重視するとともに、新たなテーマの掘り起しや、地区やテーマの枠を超えた重層的な取り組みを支援することを検討していきたい。
 JUAMの各研究会(地区、テーマ別)はそのような機会・場を提供してきており、この活性化がますます重要である。また職員は組織で仕事をすることが強みのひとつであり、研究成果を組織的な実践で活かすことができるよう、研究会、研究集会はその成果発表の場として重視する。実践を理論化し、理論を新たな実践に活かすこと、そして大学の改革、学生の成長、社会の発展につなげることがJUAMの重要な使命のひとつである。
 2016年度は学会創立20周年という節目である。JUAMがこの節目を、これからの日本の大学改革のエネルギーを創出する年として、新たな発展を遂げる年としなければならない。

3.2016年度の重点課題

(1)研究会の活性化

学会の基盤は研究会、研究グループの日常的な取り組みの積み重ねであり、会員の幅広い参加と活動の重層的展開を支援する。
研究テーマも多様な会員の参加でその幅を広げ、今日の大学像、大学行政管理のあり方、学生や教学についても新たな視点で捉え直していく契機とする。
研究成果をつくりあげ、集積していくことで、JUAMの存在価値を高めていくことを目指す。

(2)女性職員の活躍の支援

大学職員の半数は女性であり、職員組織は女性が多く活躍するという実態を反映し、女性会員の一層の拡大を進める。
女性活躍推進法の成立を踏まえて、JUAM自身がこの精神を実践していく。

(3)若手職員の育成と激励

厳しい環境にあるからこそ、若手はそれをエネルギーに転化することが大切であり、これが10年後、20年後の大学発展のカギを握る。それをベテラン層が応援するしくみを確立していく。
業務多忙のなかでともすれば「タコツボ型」になりがちな思考を、若手職員間交流の促進や会員の一層の拡大を通じて、大学改革の担い手に育成していくための諸施策を検討する。

(4)グローバル化への対応

研究者がそうであるように、世界の大学職員、同関係者などと切磋琢磨することが必要である。
グローバルな視点はJUAM創立時以来の伝統でもあり、今日の時代にふさわしいあり方で展開していく。
これまで連携・交流のあるAUA,KAUA、KAIEのほか、海外の諸団体との連携を進めるとともに、その内実を検討する。

4.20周年を迎えるにあたって

「大学行政管理学の進化と発展~高等教育の牽引を目指して~」を20周年の統一テーマとした。この統一テーマのもと、20周年の諸事業が大学の厳しい経営環境を乗り越える原動力になるよう、多様な取り組みを進めると同時に、JUAMで研究・研鑽するアクティブな人財だからこそ、大学を動かせる、大学改革を牽引できる、ということを示すことができるような活動を展開する。
大学のなかで求められる職員の位置や役割が変わる中で、大学の強み、大学で働く面白さを実感することが必要であり、大学職員中心の学会らしい発展、すなわち「実践から理論を、理論から実践へ」を重視する。

5.2016年度事業計画

(1)20周年記念事業の執行

 20周年記念事業実行委員会のもとで、次の取り組みを実施する。20周年記念事業予算は、経常予算のほか、1000万円の枠内(すでに2014年度決定、2015年度一部執行済)とする。

第20回総会・研究集会を次の10年を展望する「記念総会・研究集会」と位置づけ、規模・内容ともに特別な取り組みを行う。
各地区において、各地区別研究会との連携で、2015年7月に開催したJUAM主催シンポジウムを一つのモデルとして、シンポジウムなど記念企画の実施を進める。
学会誌は通常号に加えて、記念号発刊を行う。
若手職員を対象とした海外研修視察企画を実施する。
研究データベースの活性化とホームページのいっそうの充実など、広報機能の強化に取り組む。
「大学行政管理学」をテーマとした学会叢書の発刊を検討する。

(2)法人格取得に向けた取り組みの継続

2015年9月の定期総会で確認された一般社団法人化に関する手続きを進めるため、あらためてその意義を明確にするとともに、必要な規約改正、
会計基準の見直し、総会や役員などの位置づけや役割等の見直し作業を進める。
2016年9月の定期総会において、規約改正など総会議決が必要な事項について審議し、2017年度から一般社団法人への移行を目指す。

(3)奨励制度の創設

2015年9月総会で議論された点を踏まえて、孫福賞とは別に、様々な分野における学会員の取り組みを奨励し称える制度を新設する。
関連する規約の制定、改正を行う。

(4)研究活動の一層の発展

研究会数、研究会開催数、研究会参加者数の拡大
研究集会での発表数、発表者数の拡大
学会誌への投稿数、掲載数の拡大
研究会活性化のための研究会運営補助費の弾力的運用-2009年度の判断を踏まえて
研究成果のデータベースへの投稿拡大
研究活動に資するための文献情報の提供
地区研究会・研究グループ間の連携、交流の活性化

(5)学会としての社会に対する提言力の強化

前期(第10期)の取り組みを受けて、社会に対する提言力強化のためのチームを発足させる。

(6)会員の拡大と育成

会員数の拡大(2015年:約1400名)→1600名(全国大学職員の2%)に増やす。
会員の所属校数(2015年:約350校)→390校(大学の半数)に増やす。
大学に対する理解の拡大-学会費の大学支援(補助)などの要請を進める。

(7)高等教育関連団体との連携・協力の促進

大学マネジメント研究会との連携継続
領域の近い学会(高等教育学会、大学教育学会など)との連携
プロフェッショナル職員を育成する大学院等との連携・協力の検討
大学団体(国立大学協会、公立大学協会、私大連盟、私大協会など)との連携・協力の推進

(8)広報体制の整備充実

20周年を機に、広報委員会を再設置する。
ホームページのいっそうの充実、研究データベースの活性化、20周年事業広報に取り組む。
ホームページでの英語による情報発信を検討する。

(9)運営体制の整備と活動基盤の充実

三役のイニシアチブの強化-日常的な取り組みは三役および各委員会で
常務理事会の充実-審議・懇談事項の重視による学会の展開方向検討、共有
理事の各委員会への参画強化
学会の各種会員制度のいっそうの活用

<理事会・常務理事会の開催予定>

理事会、常務理事会ともに原則として事務局長校で開催。ただし2016年9月分は総会・研究集会会場校(慶應義塾大学)で実施する。
このほか、年間1~2回程度は、常務理事校において開催し、地区研究会等との開催を重ね、役員が地区研究会に参加する機会をつくる。
理事会 2016年9月、2017年3月を予定
常務理事会 2016年5月、7月、9月、11月、2017年1月、3月を予定

<理事会・常務理事会の開催予定>

2016年9月9日(金)~11日(日)慶應義塾大学(三田キャンパス)