2023年6月7日 第17回理事会
2023年度(2023年7月~2024年6月)事業計画
はじめに
WHOによるパンデミック宣言から3年余が経過した5月8日から、日本政府はようやく新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけを「5類」に移行した。
収束の傾向を示す新型コロナウイルスとは逆に、18歳人口減少の大学入学試験に対する影響の大きさは2022年度、2023年度と年々深刻さを増し、相当数の大学が「全入時代」を意識する、一つ上の危機レベルに入ったように思える。各大学は定員の確保に必死で、年内入試の比率を高める一方であるが、行き過ぎれば日本の国力にも影響しかねない。各校の財政も一層厳しくなり、教職員の給与をカットする大学の話、来るべき決断のタイミングを模索する大学の話も聞こえてくる。これまではスケールの大きさがメリットと考えられていたが、今後はそのことが逆に足かせになっていくのかもしれない。
2022年の出生者数が80万人を割り、それは従来の国の推計より11年早い少子化の進行であるという。このような潮流の中で約800ある国公私立の大学がすべて生き残ることは不可能で、今後は法人合併、大学合併、基幹教員の共有、カリキュラムの共営、事務業務の提携など、学校法人間、大学間の連携、高等学校を含めたグループ化の傾向が進むことが予測される。大学の経営は困難さを増し、その基幹を支える大学行政も複雑化、難化していくであろう。これを危機ととらえるか、アドミニストレーターの真価を発揮する機会と捉えるかは、心の持ちようと、これまでに身に着けた大学行政力の質と幅によるのであろう。
大学行政管理学会(以下、JUAMという)は2022年度から研究集会を対面と非対面のハイブリッド方式で開催し、今後もその方式をスタンダードとする予定である。コロナ禍があろうとなかろうと、間断なく自己を磨き続けることが必要であり、その研鑽の場としてJUAMが大きな役割を果たせるよう努めたいと思う。
これまでに続き、2023年度においても会員の意見を幅広く聴取しながら、以下の重点課題について積極的に取組んでいきたい。
重点課題
1.研究活動の活性化(次世代の育成に繋がる活動、実務家団体とし特色のある活動)
(1)定期総会・研究集会等の開催を通じての会員の獲得と次世代の育成【三役・各研究会】
2016年の約1400名をピークに会員数は減少に転じ、コロナ禍によりその傾向は加速し、現在も克服できていない。そのことによる影響は、会員数の少ない地区別研究会においてより大きい。コロナ禍の資産ともいうべきDX化により、地区別・テーマ別研究会の活動はどうにか維持できているものの、DX化が対面の必要性を低下させた面もあり、会員減少が続く現状を打破する新たな仕掛けが求められる。具体的には、年次の研究集会を地方で開催すること、その際に会員でないと享受できないサービスを提供することで若手会員の獲得、JUAMの中核を担う次世代の育成に繋げる。【三役・各地区別研究会】
参考)中京地区2001年(中部北陸地区2011年)、中国四国地区2003年、北海道地区2005年、九州地区2017年
(2)大学が当面する諸課題に関する定点調査の実施について【組織委員会】
第13期からの継続課題である会員意識の定点調査について、会員への意識調査として組織委員会へ検討を要請し、第14期中の実施を目指す。
(3)各研究会等での活動成果を集約した研究集会の実施【研究研修委員会】
研究集会は毎年定期総会と同時に行われるJUAM最大のイベントである。そしてすべての各地区別・テーマ別研究会および個人での研究や事例などを広く会員に共有し、研究活動等をさらに発展させるために不可欠なイベントである。これまでも発表やワークショップの主催など多くの研究会からの参加があるが、個人発表も含めてより積極的な参加を促すことで、研究会等の成果発表の場としての位置づけを一層明確にし、盛大な研究集会にするとともに研究会の活性化につなげたい。
(4)学術的な論文のみならず、実務的な事例報告や調査等も重視した、実務団体ならではの特色ある学会誌編集【学会誌編集委員会】
学会誌はJUAMが学会として存在するうえで最も欠かせない機能であるとともに、会員全員に還元される最大のサービスである。一方、会員のほとんどが研究を職業としない大学職員で構成されている以上、学会誌の編集方針もそれを踏まえたものであることが望ましい。具体的には、学術的な論文のみならず、実務的な事例報告や調査等、実務上有益である論稿を積極的に募集し、独自の基準で掲載するなど、実務団体が発行する特色ある学会誌の編集を確立したい。
(5)若手・女性の参加や研究会間の交流を促進するイベントへの支援による活性化【三役・各研究会】
ダイバーシティ、男女共同参画が求められる時代において、JUAM会員の女性比率は約2割と低い水準である。年齢層も40歳代、50歳代が主力であり、女性、若手に魅力ある組織にするかが大きな課題と認識している。また、オンラインによる活動が定着してきたことで地区間の交流が盛んになり、そのことが研究会の活性化にもつながると実感している。そこで、若手・女性の参加や、研究会間の交流を促進するイベントの開催を推奨し支援することで、幅広い層の研究会への参加を促し、活動を活性化させたい。
2.社会への発信力の強化
(1)文部科学省、大学マネジメント研究会等の関連団体等との交流の拡大【TF】
14期に活発化した文部科学省との交流を今後も継続する。研究集会や地区別研究会等に文部科学省関係者を講師として招くことに留まらず、文部科学省の施策の形成に当たり、役員を中心としてJUAM会員の意見を積極的に届けられるような関係性を常態化する。また、大学マネジメント研究会等の関係団体との交流を広く求め、内向き志向でなく開かれた組織を目指す。
(2)JUAMシーズDBの編成【TF】
研究活動成果(DB)やJUAMシーズの社会への発信、積極的な政策提言やパブリックコメント対応等を行う
(3)WASと連携したSDプログラムの開発やSDノウハウ集の作成【TF】
2022年12月以降、JUAMのリソースを早稲田大学アカデミックソリューション(以下「WAS」)の有するQuon Academy(クオンアカデミー)と連携させることでSDプログラムの開発に着手した。これらも踏まえて、さらに検討を進める。
(4)大学等への活動内容・成果の発信強化【広報委員会】
会員の減少傾向に歯止めをかけるためには、積極的な広報活動を行うことが必要である。その一つとして理事長・学長・事務局長など組織のキーパーソンへの働きかけが重要であり、そこに訴える活動内容や成果の発信を行う。
(5)SNS等での拡散を意識した若手中堅層に向けた積極的な情報発信【広報委員会】
上記(4)と関連し、一方では個人に向けた情報発信も重要である。特に若手中堅層への情報発信ツールとしてSNSは不可欠であり、積極的な情報発信を行うとともに質を向上させる。
3.組織基盤の強化・安定化
(1)女性、若手の組織運営への参画促進【三役】
三役、役員にはじまり、研究研修委員会等の常設委員会、地区別研究会、テーマ別研究会の運営に女性会員の参画を積極的に進めることで、JUAMのリソースを最大限活用する。同様に若手会員を参画させることで組織を時代に適合させるとともに、次世代リーダー層を育成する。
(2)会員資格緩和の検討開始(専修学校、中高法人職員等への拡大検討)【組織委員会】
少子化の折、また事務の効率化も進み、大学職員の数も減少傾向に向かう中で会員数の減少に歯止めをかけるためには、広報活動の充実だけでは限界がある。また、大学の施策も多様化し、高大接続、リスキリング、地域連携など大学内だけでは解決できない課題が重視される環境下において、必要な見識を大学職員間の交流だけで得ることは困難になっている。そこで、正会員の資格を今後も大学職員のみに限定するか否かについての検討を開始し、メリットデメリットを見極めたうえで方向性を定めることとしたい。
(3)三役タスクフォースによる課題解決の実行【TF】
三役タスクフォースは「JUAMシーズDBの構築」、「WASと連携したSDプログラムの開発」、「文科省との関係構築」の三つのグループで2022年9月に活動をスタートした。2022年度の活動成果を第27回定期総会(2023.9)に報告する予定にあるが、これまで1年間の活動成果と課題を踏まえ、JUAMが抱える諸課題の解決に向け、2023年度も活動を継続、第28回定期総会(2024.9開催予定)にその進捗成果を報告する。
(4)常設委員会(研究・研修、学会誌編集、国際、組織、広報)の運営方法の最適化【三役】
常設委員会(研究・研修、学会誌編集、国際、組織、広報)の負担の軽減、課題の解決等、運営方法の最適化を、委員の意見を尊重しながら適宜進めていく。必要に応じて、組織の見直しも視野に入れる。
(5)DX等による事務局運営の円滑化および事務局校の業務軽減【事務局・三役】
一般社団法人としての透明性・健全性の確保等に伴い、学会事務局の業務負担は増加の一途をたどり、とりわけ事務局長校の業務負担は大きい。引き続きDX化等による事務局業務全般の見直し、体制の見直し(含む一部業務の委託化)等の合理化を進めて負担を軽減し、事務局体制の多様化を促進する。
(6)収支均衡を原則とした安定的な財政基盤の確立(含む30周年事業に向けた財源の確保)【三役・事務局】
予算執行の効率化を図り、収支均衡の予算を編成することを目指す。あわせて、30周年事業に向けた財源確保を目指すが、これらは研究を旨とするJUAMの活動の本質を損なうものであってはならない。収入面においては、諸施策を講ずることで減少傾向にある会員数を増加に転じさせ、主な収入である会費収入を安定的に確保することを目指す。加えて一定以上の広告収入を継続して確保することで、研究活動を担保できるよう、役員一同が協力して獲得に努める。さらに研究集会だけでなく個別の研究会等においても企業の有料参画を認める等、収入の多角化を図る。