第11回孫福賞(五藤 勝三)

第11回(2019年度)孫福賞受賞者

五藤 勝三 氏(学校法人 関西大学)

1. 表彰日:2019(令和元年)年9月7日(土) 2019年度 第23回定期総会・研究集会

2. 場 所:実践女子大学 渋谷キャンパス

3.表彰内容:

孫福賞選考規程第7条第1項第一号(研究集会発表、学会誌投稿その他これに準ずる本会内外の特に優れた研究・実践業績)、第二号(委員会、支部・地区別研究会、テーマ別研究グループ等の成果又は構成会員の特に優れた実績)及び第三号(大学職員の社会的若しくは国際的評価又は認知度の向上に関わる特に優れた実績)に該当し、同規程第2条第一号、第二号及び第四号により孫福賞を授与する。

4.選考理由:

(1)研究集会発表、学会誌投稿その他これに準ずる本会内外の特に優れた研究・実践業績 (第7条第1項第一号)

 五藤氏は1998年に当学会に入会し、2001年9月から2005年8月まで理事2期、2005年9月から2007年8月まで常務理事1期を歴任された。特に、常務理事在任中の2年間は、西日本地区事務局長として各種研修会やセミナー等の開催に尽力された。その後も近畿地区研究会等で講師として講演されるなど、長年にわたって当学会の活動に寄与されてきた。
 研究集会での発表については、第9回(2005年)に人事制度の再構築について発表され、また、第12回(2008年)、第20回(2016年)、第21回(2017年)の3回にわたって、これまでの人材育成に関する様々な事例や経験を取り上げながら、これからの大学事務職員のあるべき姿と人材育成方策等について多くの知見を発表された。特に、氏のグループワークにおけるファシリテートは、ユーモアも交えながら様々な観点から豊富な経験や知見に基づく助言を行うことから、常に多くの参加者から好評を得ており、当学会の活動を大いに活性化された。
 また学会誌へも、2006年と2008年にそれぞれ「失敗事例から学ぶ人材育成」をテーマに、これまでの事例研究を中心に発表された。
 さらに、2015年7月には当学会主催シンポジウム「大学のガバナンス改革と職員の役割」、2016年8月には当学会20周年記念事業において、人材育成や学生へのピア・サポート制度などについて発表された。
 当学会以外においても、氏のこれまでの大学事務職員の人材育成に携わった多くの経験をもとに、2014年に『大学職員のための人材育成のヒント:失敗事例から学ぶケースワーク28の視点』(澤谷敏行氏、河口 浩氏との共著、関西学院大学出版会 刊)を出版され、2017年にはその続編として『続 大学職員のための人材育成のヒント:失敗事例から学ぶ若手・中堅職員の視点28』(澤谷氏、河口氏との共編著、関西学院大学出版会 刊)を出版された。この他にも、大学基準協会『大学職員論叢』での発表などもされている。

(2)委員会、支部・地区別研究会、テーマ別研究グループ等の成果又は構成会員の特に優れた実績(規程第7条第1項第二号)

 五藤氏は、自身が有する豊富な人材育成や学生支援に関する知見を多くの学会員へ教授されるべく、2005年6月の大学改革研究会でのワークショップ「関西大学人事制度の再構築の事例~目標と運用、そして課題」を皮切りに、近畿地区と関東地区の各地区別研究会において人材育成に関して複数のテーマの講師として講演された。また、中国・四国地区研究会においては学生が学生を支援するピア・サポート制度について講演された。さらに、大学改革研究会においては上記のほかにも「管理職者の夢と現実」「理想の大学職員像」「コミュニケーション」「人材育成」などをテーマに、様々な講演をされている。
 このように、地区別研究会や大学改革研究会における講演活動はもちろんのこと、様々な地区別研究会やテーマ別研究会などにも積極的に参加されるとともに、大学改革研究会においては、それまで近畿地区研究会の役割の一部として担っていた大学改革研究について、若手職員が中心になって積極的に活動を推進していく中で、これまでの経験などをもとに研究会の運営方法などについて積極的なアドバイスをすることによって、研究会の活性化とともに独立した研究会として大きく成長する一助となった。
 現在も2018年3月に近畿地区研究会で講師を勤めるなど、積極的に学会活動を続けられている。

(3)大学職員の社会的若しくは国際的評価又は認知度の向上に関わる特に優れた実績(規程第7条第1項第三号)

 五藤氏は1977年に学校法人関西大学に奉職され、現在は学校法人関西大学が100%出資する「株式会社関大パンセ」の代表取締役をされている。
 この間、2012年10月から2016年9月にかけては学校法人関西大学の常任理事を務めたほか、多くの学内要職を歴任された。特に、人事部門の諸業務に多年にわたり従事され、大学事務職員研修の体系化、人事制度の再構築、関西大学年金制度の創設、福利厚生制度の充実など、様々な取組み・実績を挙げられた。特に、人材育成の分野では多くの経験と知見を有され、学内はもとより学外へも多くの知見を教授された。また、学生支援部門においても、文部科学省「学生支援GP」の申請・採択にあたり中心的な役割を担い、学生が学生を支援する「ピア・サポート制度」の構築に尽力を上げられるとともに、常に学生第一の考えをもって職務に取り組まれるなど、課外活動の積極的な支援にも寄与された。
 さらに、本務校の業務に加えて、日本私立大学連盟では研修企画委員会に長年携わり、職員総合研修(基礎・応用課程)やアドミニストレーター研修の運営委員に従事するなど多くの功績を残された。また、人事部門での経験や氏が有する多くの資格を生かされ、日本産業カウンセラー協会のシニア産業カウンセラー、キャリアコンサルティング協議会の1・2級キャリアコンサルティング技能士としての講演活動など様々な活動に従事されてきた。さらに、最高裁判所長官の任命による労働審判員(使用者側)を務められるなど、大学事務職員の社会的評価の向上に大いに貢献された。現在は母校である報徳学園において理事を務められている。
 このように、氏の多くの経験や知見をもとに、従来の大学事務職員の枠組みに捉われず、新しい大学事務職員像を常に提示してこられた氏の積極的な活動は、多くの大学事務職員から共感を得られたのはもちろんのこと、激しい時代の変化に大学が対応しなければならない中で、これからの大学事務職員が有すべき能力や資質などのあり方について、各大学がそれぞれの建学の精神やステークホルダーなどからの社会的要請に基づきどのように定義するかについての考察を深めるきっかけを与えることとなった。これらは、2017年4月の大学設置基準の改正により大学事務職員のSDが義務化されたことで、現在はさらにその高まりをみせている。
 多くの経験や知見などを生かされた五藤氏のこれらの活動は、大学事務職員としてのロールモデル的存在であり、今般の孫福賞の受賞に相応しいと言える。

5.孫福賞を受賞して

 ただ今、過分なご紹介をいただきました、関西大学の五藤勝三でございます。今回、はからずも孫福賞を授与していただきまして、言葉では表せないほど感激し、本当に有難い気持ちで一杯です。ご推薦いただいた方、選考委員会の皆様方、最終的に授与を決定いただきました永和田会長はじめ役員の皆様方に心より感謝申し上げます。
 孫福賞は当学会におきまして大変栄えある賞で、私にはとてもご縁はないだろうとずっと思っていましたので、大変驚いている次第です。私はこれまで長年にわたり大学職員をしてまいりましたが、大学職員としてというよりもむしろ、私の人生の中で最高の勲章をいただいたと、本当に嬉しく思っています。
 そうした気持ちの一方で、これからの大学行政管理の分野で私は今後どのような貢献ができるのかということを考えますと、責任の重さを痛感し、身の引き締まる思いでおります。

 私は1998年、この学会が設立された翌年に入会しました。その後、理事、常務理事等をさせていただきましたが、常務理事であった当時、第3回孫福賞を受賞された関西学院大学の澤谷敏行さんが副会長で西日本支部の支部長をなさっていました。澤谷さんといろいろ相談させていただきながら、近畿地区を中心として、西日本支部で様々な研究会やセミナーを開催していこうということで、皆様と一緒に尽力する中で本当に素晴らしい経験をさせていただき、励みにもなりました。

 関西大学の職員としては、42年間の職業生活のうち4分の3にあたる32年ほどを、人事、総務、あるいは法人の業務に携わってまいりました。その中で、私にとって大変印象に残っている仕事が三つほどございます。
 一つ目は、私は個人的に人材育成や職員の能力開発、キャリア形成ということにも非常に関心を持っていましたので、研修の業務については特に積極的に取り組んできました。
 二つ目は、今から20年前の1999年、当時の大学業界では先駆的であったと思いますが、職員の人事考課の結果を処遇に反映させようということで、当時はいろいろと苦情も言われましたが、何とかそれを立ち上げることができました。
 三つ目は、これも同じく20年前ですが、当時は日本の経済が大変厳しい状況で、企業の経営環境も厳しく、厚生年金基金や各企業の企業年金が破綻しつつあった時期でした。私立大学の経営状況も大変厳しくなり、私学高賃金論のあおりを受け関西大学でも長年にわたって、教職員の賃金はベースアップがありませんでした。その中で、教職員の福利厚生の充実、あるいは人材確保という点からもぜひ学内年金制度を立ち上げたいということで、いろいろご意見やご批判もいただきながら、何とか当時の学校法人にご理解いただいて、実現に漕ぎ着けることができました。

 最後になりますが、今回の孫福賞の受賞という感激と感謝の気持ちを忘れずに、今後とも大学業界のさらなる充実発展のために微力ながら尽力できるよう精進してまいりたいと思います。皆様にはこれからも温かく、また厳しいご指導、ご鞭撻を賜りますようお願いいたしまして、私の孫福賞受賞のお礼の挨拶とさせていただきます。本日は誠にありがとうございました。

<五藤 勝三 氏プロフィール>

<学歴>
1977 年3月 関西大学法学部法学科 卒業
2019年4月~ 関西大学大学院ガバナンス研究科在学中

<職歴>
1977年4月 学校法人関西大学奉職 厚生課
1982年4月 人事課
1992年4月 人事課主任
1994年4月 人事課課長補佐
1997年4月 人事課長
2004年4月  総務局次長(人事課長事務取扱)
2005年4月 学生サービス事務局次長(ボランティアセンター事務長事務取扱)
2007年4月 学生サービス事務局長
2010年4月 法人本部長(~2013 年3月:総務局長事務取扱)
2017年4月 理事長付参与
2019年4月 理事長付(株式会社関大パンセ出向) (現在に至る)
2004年10月~2008年9月 評議員
2008年10月~2012年9月 理事
2012年10月~2016年9月 常任理事
2012年8月~ 株式会社関大パンセ代表取締役(現在に至る)

<その他役職>
2001年9月~2005年8月 大学行政管理学会 理事
2005年9月~2007 年8月 同 常務理事
1993年4月~1997年3月 日本私立大学連盟 研修企画委員会 職員総合研修運営委員会 研究員
2005年5月~2008年3月 同 障害者雇用問題検討プロジェクトチーム 委員
2006年4月~2007年3月 同 研修企画委員会 委員
2007年1月~2007年3月 同 研修企画委員会 アドミニストレーター研修準備委員会 委員
2007年4月~2013年3月 同 研修企画委員会 アドミニストレーター研修運営委員会 委員
2014年4月~2016 年3月  労働審判員
2018年5月~ 学校法人報徳学園 理事(現在に至る)