第3回孫福賞(澤谷 敏行)

2008年度 第3回孫福賞受賞者

澤谷敏行氏 (関西学院大学)

1. 表彰日: 2008(平成20)年9月6日  2008定期総会・研究集会

2. 場 所: 日本大学 法学部

3.表彰内容:

澤谷氏の研究等実績は、孫福賞選考規程第7条第1項第一号(研究集会発表、学会誌投稿その他これに準ずる本会内外の特に優れた研究・実践業績)及び第三号(大学職員の社会的若しくは国際的評価又は認知度の向上に関わる特に優れた実績)に該当し、同規程第2条第二号に規定する成果(大学行政管理分野に関わる実践・研究水準の向上)を達成したので、澤谷氏に孫福賞を授与する。

4.選考理由:

澤谷氏は、当学会の創設時に入会以来、「日中の大学行政管理の比較、新しい大学職員像に関する研究活動(当学会活動)」「日中の学生交流・文化推進に必要な実務書の執筆・研究活動(JAFSA活動)」を積極的に展開してきた。この間、韓国大学行政管理学会での報告も行った。さらに、当学会の理事、常務理事、副会長・西日本支部長を歴任し、学会研究活動の活性化、後進の育成に尽力した。これら実践的研究活動等をとおして、大学実務者に対して大いなる影響と刺激を与え、実践的研究の高度化に指導的役割を果たした。

<澤谷敏行氏プロフィール>

現職:関西学院大学キャリアセンター次長

著書・論文(代表的なもの): 『こんな中国人 こんな日本人』(共訳・編)/ 関西学院大学出版会 2001 『大学事務職員のための日中留学交流の手引き』(共著・編)/関西学院大学出版会2005 「中国の大学行政管理」(単)/大学行政管理学会誌第1号 1998 「アジアへの海外留学−欧米への留学と同じメリットを備えているか」(単)/『留学交流』2002 「失敗事例から学ぶ人材育成」(事例研究)(共)/大学行政管理学会誌第10号 2007

学会活動:大学行政管理学会理事・常務理事・副会長/2001~2007

孫福賞授賞式

「孫福賞受賞記念講演」

<孫福賞を受賞して>

孫福賞を頂くことになろうとは夢にも思っていませんでした。受賞式でスピーチをした時から緊張が続き、私の人生の何かが変わったように感じています。受賞できたことを大変栄誉に思います。孫福賞にご推薦いただきました龍谷大学の津守浄子氏、本学の花田司氏をはじめ、ご支援とご指導をいただきました西日本の会員諸氏、学会理事および関係各位に改めて深く感謝申し上げます。

審査委員会では、「日中の大学行政管理比較、新しい大学職員像に関する研究活動(当学会活動)」「日中の学生交流・文化推進に必要な実務書の執筆・研究活動(JAFSA活動)」という過分な評価をいただきましたが、実際にやってきましたのは、2つの分野で、一つは中国の大学研究、もう一つは、学会活動を通じての新しい大学職員像を追究するということです。前者のきっかけとなったのは、関西学院大学職員留学制度で 1983年9月から1年間中国の大学に留学し、中国の高等教育制度を現地で勉強したことです。当時言葉のわからない私に中国の高等教育制度を個人指導で熱心に伝授してくれた教授がいました。日本に帰国後、さっそく発表しようとしましたが、しかし中国の高等教育は猛スピードで変化しており、学んだことの大半は発表する機会を逃してしまいました。大変申し分けないことをしたという気持ちと無駄にしてはならないという気持ちから、中国大学の変化・発展を見届けていこうと思うようになりました。時々中国でも既に忘れ去られている話を持ち出すと、中国人の友人から「あんたは中国の生き証人だ」といわれることがあります。受賞スピーチで述べましたが、中国の大学のイデオロギー性の希薄化に注目しながら、今後とも日中の大学行政管理の実践的な比較研究を通じて、多様な大学のあり方を理解し、認識を深めていきたいと考えています。

そして新しい大学職員像の追究についても西日本を中心に諸氏と共同研究を継続し、後輩大学職員のためにお役に立ちたいと考えています。

最後に、もう20年数年前になりますが、中国留学から帰国した頃、JAFSAの研究集会ではじめて故孫福弘さんにお会いしました。当時は学会もなく、孫福さんをはじめ後に学会の創設に関られた方々は、JAFSA(当時は外国人留学生問題研究会と呼んでいた)や私大連盟等の研修会で活躍されていました。その後姿に導かれ創設時に学会に入会しました。学会の存在は、学内から広く目を全国へ向けさせてくれました。また個別大学を超えた大学職員論の展開や共同研究の可能性を拡大してくれました。今後大学と学会がさらに発展するために、私も微力ではありますが学会役員の経験も踏まえて、尽力させていただきたく所存です。