第5回(2011年度)孫福賞受賞者
堀 雅裕氏(跡見学園)
小笠原 玲子氏(淑徳大学)
1.表彰日:2011(平成23)年9月3日 2011年度定期総会・研究集会
2.場 所:ホテル金沢
3.表彰内容:
孫福賞選考規程第七条第一項第二号(委員会、支部・地区別研究会、テーマ別研究会・グループ等の成果又は構成会員の特に優れた業績)及び第三号(大学職員の社会的若しくは国際的評価又は認知度の向上に関わる特に優れた業績)に該当し、同規程第二条第一号により孫福賞を授与する。
4.選考理由:
(1)委員会、支部・地区別研究会、テーマ別研究グループ等の成果又は構成会員の特に優れた実績(規程第7条第1項第2号)
両氏は広報委員会(現学会誌編集委員会)のメンバーとして、その活動の中心的役割を果たしてこられた。堀氏は1998年に広報委員に就任し、学会誌の第2号と第3号では委員として、第4号から第11号までは委員長として編集発行責任者という重責を担われた。また、会報に関しては、第3巻第2号(1999年12月発行)から第11巻第2号(2007年3月発行)まで編集発行責任者を務められた。小笠原氏は初代広報委員長の原田氏のもと、1997年の会報および1998年の学会誌創刊作業に携わり、1999年から正式に委員として2008年8月まで堀委員長を一貫して補佐し、編集・発行の任に当たられた。
さらに、両氏は学会の社会的認知度の向上及び学会誌としての質を保証するために査読制度の整備を図った。特に査読者の判断の公平性を担保し、査読結果に対する説明根拠となる査読基準の検討・設定は、大学行政管理分野における実践及び研究水準の向上に大きく寄与するものであり、特筆に価する。その他、広報委員会の学会誌編集委員会への改組についての提言等も含め、両氏は現在の学会の広報活動や学会誌作成の基盤を築き、学会及び大学行政管理学の拡大発展に大きく貢献した。
(2)大学職員の社会的若しくは国際的評価又は認知度の向上に関わる特に優れた実績(規程第7条第1項第3号)
両氏は学会誌の発行を通して、近年の大学職員の役割やSDの重要性を広く社会に認知する上で、大きな影響を与えてきた。また、図書館学を修めた職員として、その専門性を遺憾なく発揮し、孫福氏編著による「学界展望2001-大学行政管理職形成のための研究文献ガイド-」(『大学行政管理学会誌』第6号)及び「学界展望2002-大学行政管理職形成のための研究文献ガイド-」(『大学行政管理学会誌』第7号)において、大学行政管理分野の研究動向をレビューし、書誌の作成を担当された。
その他、堀氏は大学職員としての豊かな経験を活かし、2001年9月から2007年8月までは学会の常務理事として、また2005年10月から2007年8月までは孫福賞選考委員会委員長として「孫福賞選考規程」の作成等、制度整備にも尽力され、大学行政管理の質的向上に対して多方面から貢献をされてきた。
5.孫福賞を受賞して
(1)堀 雅裕氏(跡見学園)
このたびは、思いもかけず、大学行政管理学会の学会賞「孫福賞」を頂戴いたしました。この場をお借りして、大島英穂会長、福島一政選考委員長をはじめ、ご推薦の労をとられた選考委員、ご審議を頂いた理事の皆様に、厚く御礼申し上げます。 受賞の主な理由としては、広報委員会が担当した本学会の学術刊行物(年刊)である『大学行政管理学会誌』について、その制作の実務に長年にわたり携わって来たということと伺っております。
私のような者のほかに、執筆・講演業績、研究グループ活動、委員会活動等について、本学会に多大なご貢献を果たされている会員の方は何人もいらっしゃるのにと思うと、その過分なご配慮に対し、ただただ恐縮するばかりでございます。
申すまでもなく、この新たな学会誌の制作は、当然、私一人では全く不可能な仕事です。今回、一緒に受賞された淑徳の小笠原さんのほか、ファンダーの宗像さん、東洋の笠原さん、青山の伊藤さん、東洋英和の町田さん、国士舘の大平さん、同じく牧さん、法政の近藤さん、同じく石川さん、龍谷の室住さんをはじめとする、手弁当で、時間と労苦を惜しまなかった広報委員会のメンバーの方々との強い持続的な連携があって、はじめて可能になった仕事です。
また、お忙しいなか、広報委員会からの投稿依頼に応じてくれた方々、査読依頼を快く受けていただいた方々、提出原稿の修正について真摯に対応していただいた執筆者の方々、毎回わがままな要求に応じて下さった印刷会社の方々、これら多くの方々のご協力が、我々、制作を担当する側の関係者にとっては、毎号、何よりの励みでありました。
このような広範なお力添えを得て、学会誌制作という、当初、自問自答の手探りで、全くと言っていいほど不慣れな仕事に、とまれ少しずつ一定の形を与え、第11号からの「業務委託」にまで漕ぎ着けることができました次第です。
その後の学会誌制作については、広報委員会を改組した新たな学会誌編集委員会が引き継いで下さりました。同委員会は、かねてより存在し続けた執筆者の拡充、査読の充実をはじめとする幾多の課題に対し、査読者データベースの構築等の新しい優れた取り組みを実施に移しております。
また、改組後、広報委員会のメンバーの何人かが、引き続き学会誌編集委員会の顔ぶれに残って頑張っておられることも、大変頼もしく思っております。
私ごとですが、本年6月から、女子教育の勤務校の常務理事を命じられました。現在、日本の大学、特に私学が厳しい環境下に置かれています。「失われた20年」において、その間の私学の存続基盤であった大学進学率の高まりは、高卒若年層の雇用機会の激減及び家計の借入による学費負担によって現実化していると言われています。その見えざる影響の広がりは、これまでの私学経営の思考枠組や学校会計等の数理だけでは認識しきれない社会の深層で、大学自治・学問の自由の存立にも係る新たな制約条件になりつつあるのではないかと思われます。
許容ギリギリの負債の上に立たされた過半の学修者(私学にとっては帰属収入の最大の提供者)が、それにもかかわらず、「国家の名誉」(憲法前文)にかけ、将来、言葉の正しい意味で「私立」し、無関心を超えて広く「共援」することができる主権市民(公民)になるという予定調和が、これからも成り立つのか。そのための大学の教育責務とともに、今、じっと眼を凝らし、思いを巡らせています。
私も小規模な私学に身を置く一人の人間ではございますが、これからも皆様とともに、「大学行政管理学」の一学徒として、頑張って勉強を続けていきたいと考えております。
<堀 雅裕氏プロフィール>
<学歴>1976年3月 慶應義塾大学法学部政治学科卒業、1980年3月 同大学大学院法学研究科修士課程政治学専攻修了、1982年3月 同大学文学部図書館情報学科(学士入学)卒業
<職歴> 1982年4月 跡見学園女子大学図書館司書、法人事務局企画課長、総務部人事課長、総務部長、法人事務局長等を経て、常務理事(現在)に至る。
(2)小笠原 玲子氏(淑徳大学)
今年度の総会におきまして、第5回孫福賞を受賞させていただきました。私自身がこの栄誉ある賞をいただくことになるとは露ほども考えておりませんでしたので、この賞に値する活動が出来てきたのかと、誠に心もとない思いです。会長始めご推薦くださった方々、また、選考委員の方々に心から御礼申し上げます。
主たる受賞理由は学会広報委員会での活動です。実は学会の初代広報委員長が当時の私の上司であったため、学会会報・学会誌の創刊から携わらせていただきました。以後11年に亘って、大学行政に携わる方々の、日常業務の積み重ねと分析の中からこそ重要な知見が得られると信じ、編集作業をしてきたつもりです。
学会誌について言えば、当初は投稿者が少なく書き手の確保に苦労しましたが、総会や研究会における研究発表者の方に執筆を依頼するなどして、何とか刊行を維持することが出来ました。その後は学会の拡大・研究活動の充実とともに投稿者が増加しましたが、それにつれて学会誌として社会的に認知されるためのレフェリー制度の整備が急務となり、平成14年に広報委員会の申し合わせとして「査読基準」を設けました。これにより査読者の判断の公平性が担保され、また投稿者への査読結果説明の根拠が明確になったと思っております。
投稿者確保の心配がなくなり、学会誌のさらなる発展を模索する中で、大学行政管理分野の研究動向をレビューするため「学会展望」の掲載を企画しました。学会のファウンダーである孫福弘さんがその執筆をお引き受けくださり、「学会展望2001-大学行政管理職形成のための研究文献ガイド-」(大学行政管理学会誌 第6号 2002)、「学会展望2002-大学行政管理職形成のための研究文献ガイド-」(大学行政管理学会誌 第7号 2003)を掲載することが出来ました。
残念ながら孫福さんのご逝去により継続することは出来ませんでしたが、これからも大学行政管理学会らしい、実践に裏打ちされた理論構築の場になるような学会誌の発展を願っております。
広報委員会活動は多くの委員の方とともに運営してきたものであり、この受賞は、これまでの投稿者の方々や広報委員の方々のお力によるものです。また広報委員会が困難な局面を迎えたときには、その時々の会長や事務局長から大きな支援をいただきました。関係する皆様方に心から感謝を申しあげますと共に、今後とも孫福賞の名を汚すことのないよう努力して参りたいと思います。
(2)小笠原 玲子氏(淑徳大学)
<小笠原 玲子氏プロフィール>
<学歴>1977年3月 東洋大学社会学部応用社会学科図書館学専攻卒業
<職歴> 1977年4月 東洋大学入職、1990年6月 淑徳大学に移り現在に至る。