第9回孫福賞(山﨑 その)

第9回(2016年度)孫福賞受賞者

山﨑 その 氏(京都外国語大学)

1. 表彰日:2016(平成28)年9月10日(土) 2016年度 第20回定期総会・研究集会

2. 場 所:慶應義塾大学 三田キャンパス

3.表彰内容:

孫福賞選考規程第7条第1項第一号(研究集会発表、学会誌投稿その他これに準ずる本会内外の特に優れた研究・実践業績)第二号(委員会、支部・地区別研究会、テーマ別研究グループ等の成果又は構成会員の特に優れた実績)及び第三号(大学職員の社会的若しくは国際的評価又は認知度の向上に関わる特に優れた実績)に該当し、同規程第2条第一号及び第二号により、孫福賞を授与する。

4.選考理由:

(1) 研究集会発表、学会誌投稿その他これに準ずる本会内外の特に優れた研究・実践業績 (第7条第1項第一号) 山﨑その氏は、2001 年から本学会に加入され、以来今日に至るまで、大学行政に係る極めて活発な研究発表活動を本会内外で続けられてきた。山﨑氏の研究テーマを大別すると、①大学経営(効率化・ガバナンス・リーダーシップ)、②人材育成(SD)、③大学評価(認証評価・自己評価)の3つになる。研究集会の発表実績は、2004 年第8 回研究集会において「大学院拡充政策の実証的分析 -人文・ 社会科学系修士課程を中心に-」をテーマに発表されて以来、2015年第19回研究集会で の発表まで延べ 8回(共同発表を含む)、学会誌への投稿は 2005年の第8号に「大学院拡充政策の実証的分析 -人文・社会科学系修士課程を中心に-」を投稿されて以来、計6回にのぼる。本会外でも、日本評価学会、日本高等教育学会、大学教育学会において活発な研究発表を行っており、これらを合わせると研究発表は25回を数える。論文投稿についても同様で、本会学会誌以外への掲載も合わせると22回を数える。また、山﨑氏は当会に入会されたことにより、他の会員の意欲的な研究活動に触発され、2004年に同志社大学大学院総合政策科学研究科博士後期課程に入学、学長事務室室長として多忙な日々を送りながら研究を継続され、博士論文テーマ「大学経営の評価システムに関する研究」により 2011年に博士(政策科学・同志社大学)の学位を授与された。2012年には、この研究成果を基に本会の自費出版奨励 交付決定者第一号となり、『大学経営の評価システム-手法の開発とマネジメントへの応用』を晃洋書房より出版している。 山﨑氏が同志社大学大学院総合政策科学研究科で学位を取得された後、何人もの大学職員が同研究科に入学されている。大学職員も研究をして、大学に関連する新しい知を自ら創り出していくという姿勢を、身を持って後進に示された功績は大変大きく、本会の設立の理念とも方向性を同じくするものであると評価できる。なお、山﨑氏は、現在も同研究科の学生と月2回のゼミで一緒にディスカッションしながら論文作成のアドバイスなどをされている。

(2) 委員会、支部・地区別研究会、テーマ別研究グループ等の成果又は構成会員の特に優れた実績 (第7条第1項第二号)

 同氏は2006年から大学職員研究グループ、2009年から大学経営評価指標研究会に参加されている。大学職員研究グループでは、各務正氏、山本淳司氏らとともに、研究集会やグループ内での成果発表、当会会員への『職務活動に関するアンケート調査』の分析を行うなど、研究会の中心的メンバーとして活躍されている。また、2005年から2011 年(第6期~第8期)まで3期6年に渡って当会の理事を務め、その間、近畿地区研究会の運営や第7期・第8期においては西日本事務局担当として、運営面でも当会の発展に大きく貢献をされた。

(3)大学職員の社会的若しくは国際的評価又は認知度の向上に関わる特に優れた 実績 (第7条第1項第三号)

 上述のとおり、山﨑氏は、当会外においても活発な研究発表活動を行っているほか、 大学コンソーシアム京都では、2005年から2009年までSD研究会研究員、2010年から 2014年までSD研修委員会委員(2011年~2014年 委員長)、2013年から2014年まで 大学政策委員会委員を務めた。さらに、2008年から大学評価・学位授与機構研究協力者、2014年から大学基準協会分科会評価委員となり、現在もその任を継続されている。大学評価・学位授与機構の研究は評価の仕組みを作る側の視点に偏りがちであるが、大学職員としての豊富な経験と当会等での活動を通じて培われた知見を持つ山﨑氏が参加することで、大学側の視点から評価(現在は質保証のための計画の作り方・進め方)を捉えることが可能になっているということである。
 山﨑氏がJUAMの活動を通して得られた多様な大学の実態を把握した上で意見を述べていることは、大学界全体にとって大きな意味がある。また、山﨑氏は、当会等での研究成果を基に科学研究費補助金〔基礎研究(C)〕を代表者として2件、分担者として1件獲得されているほか、同志社大学大学院総合政策科学研 究科の嘱託講師として、2012年から科目名「政策科学実践論」を担当し、意思決定や評価手法の説明と、活用方法等について講義をされている。京都外国語短期大学 キャリア英語科の非常勤講師としても、2013年から科目名「コミュニケーションと仕事」を担当しドラッカーの経営学の中で取り上げられているコミュニケーションの考え方や、ゴ ールマン等のリーダーシップの考え方、行動について講義している。

5.孫福賞を受賞して

 孫福賞受賞にあたりまして、まずは皆さま方にお礼を申し上げます。西川会長、原選考委員長をはじめとする選考委員の皆さま、推薦の労をとってくださった近畿地区の理事の皆さま、ご審議を頂いた理事の皆さま、ありがとうございました。そして、このたび授賞理由として挙げてくださった業績は、申し上げるまでもなく私一人の力で成し得たものではありません。大学院の恩師や研究仲間、職場の上司や同僚、何よりも学会の様々な活動を通して皆さまからご指導、ご支援いただいた結果でございます。あらためて大学行政管理学会の皆さまにお礼を申し上げます。
 私は、孫福賞を受賞された先輩方が、受賞のスピーチの中で口々に孫福さんとの印象深い思い出を語っておられるのを、とても羨ましく思っておりました。と申しますのは、私は一度も孫福さんにお会いしたことがありません。私が大学行政管理学会に入会したのは2001年です。もしかしたら、お会いするチャンスが何度かあったかもしれません。しかし、入会してしばらくはまったくの幽霊会員で、積極的に学会活動に参加するようになったのは理事になった2005年からでした。皆さまご存じのとおり、2005年にはもう孫福さんはいらっしゃいませんでした。今さらながらではありますが、この数年間の貴重な機会を逸してしまったことをとても残念に思っております。
 さて、諸先輩方は大学行政管理学会の創立に直接関わられたり、様々な研究会や研究グループをご自身の手で立ち上げ育ててこられたりした方々です。私は諸先輩方が活躍されるお姿に憧れ、研究会やグループの魅力的な活動に惹かれて、後からメンバーに加えていただきました。つまり、私は草創期の次の世代の会員といえます。このような私が、孫福賞をいただいたことは大きな意味があると感じています。それは、大学行政管理学会がこの先30年、40年と続いていく中で、ぶれずに目指していくもの、学会の原点を先輩方からしっかりと受け継ぎ、そして次の世代へ渡していくという重要な役目をいただいたということです。
 この役目を確実に実行するために、私は一つのことを決意いたしました。それは「知行合一(ちこうごういつ)」の実践です。「知行合一」は王陽明が唱えた陽明学の命題のひとつで、吉田松陰も好んで松下村塾に掲げていたといわれています。知ることと行うことは一つのもの、知って行わないのは未だ知らないことと同じという意味だそうです。何歳になっても、いやむしろ齢を重ねるほどに、初めてのことや慣れないことをするのは怖く、面倒です。しかし、これからは知っているだけ言うだけではなく、行動に示していくことを心がけたいと思っています。
 もちろん、なんでもやればいいとは思っておりません。私は博士後期課程を修了するのに7年間もかかりましたが、この間、そして現在も一貫して「評価」を研究のテーマとしてきました。評価とは、あることができたのか、できなかったのか、あるいはその数値は高いのか低いのか、という事実の特定だけではなく、そのことは良かったのか悪かったのか、重要なのかそれほどでもないのか、という価値を付けて初めて評価になると考えています。知ったことをきちんと評価し、良しとすることを速やかに行動する。これを実践していきたいと思います。
 とはいえ、行動には失敗がつきものです。止めておけばよかったと後悔することもあると思いますが、「何をアホなことをしてるのや」と突っ込みを入れ、笑ってくれる仲間や先輩、後輩方がいてくだされば、失敗もまた楽しい経験になるでしょう。皆さまのお力添えをいただきながら、これまで以上に大学行政管理学会と日本の高等教育、大学の発展のために力を尽くしていきたいと存じます。

<山﨑 その 氏プロフィール>

<学歴>

1981年3月同志社大学経済学部卒業
2011年3月同志社大学大学院総合政策科学研究科博士後期課程修了
博士(政策科学・同志社大学)

<職歴>
1991年  京都外国語大学入職、総務部係長、学長事務室室長、総合企画室参事をへて総合企画室次長に就任し、現在に至る。
2012年~ 同志社大学大学院総合政策科学研究科嘱託講師
2013年~ 京都外国語短期大学キャリア英語科非常勤講師

<その他役職>
2005年9月~2011年9月 大学行政管理学会理事
2007年9月~2011年9月 同学会西日本事務局
2008年~ 大学評価・学位授与機構研究協力者
2011年~2014年 公益財団法人大学コンソーシアム京都SD研修委員会委員長
2013年~2014年 同法人大学政策委員会委員
2014年~ 大学基準協会分科会評価委員
2015年~ 一般社団法人日本能率協会大学マネジメント改革総合大会企画委員、他