今般のウクライナ情勢に思う

 大学行政管理学会は、大学の行政管理について実践的、理論的に研究し、大学行政管理にたずさわる人材の育成をとおして、大学の発展に寄与することを目的に活動しています。それは、すなわち、大学の理想の姿の実現に貢献するための活動でもあります。
 一方、大学は学術の中心として広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的として活動すべきものですが、ロシア軍による今般のウクライナへの侵攻で、彼の地の大学の活動が継続の危機にさらされています。
 今回の侵攻は国連憲章に反する行為であり、断じて受け入れることは出来ません。苦境に立たされ、命の危険に曝されているウクライナの人々のことを想うと、胸が痛みます。戦禍により、ウクライナの大学生たちの学び舎が破壊され、昨日まで日常であった「学びの場」が失われようとしています。命すら奪われているかもしれません。
 大学における学術研究や専門学芸の教授は、国や産業、そして社会の発展に貢献するものであり、何より、それを担う人材を育成するものです。そのような場がウクライナにおいて失われるということは、国を支える社会や機能が崩壊しかねない、言い換えれば、未来の担い手を失いかねないことを意味し、中長期的に大変大きな損失に繋がります。同じことが、侵攻に反対して抗議の声を上げている大勢の人がいながらも、多くの若者を戦地に送っているロシアにも当てはまるかもしれません。戦争は愚かな行為です。
 このような状況にあって、大学行政管理学会を構成する各会員の所属する大学それぞれが、同じ高等教育機関として、ウクライナを中心とした学びの場を奪われた学生や研究者等のために何が出来るのかを真摯に考えることは、平和な世界で活動できる日本の大学の責務のように思います。あわせて、大学行政管理学会の会員ひとりひとりが、平和が回復した後の復興フェーズまでも含めた長い時間軸で、できる支援を考え、彼の地の高等教育の再生に貢献していくことができれば、それは本学会の活動目的にかなった行為だと信ずるところです。

2022(令和4年)3月7日
一般社団法人大学行政管理学会
会長 笠原 喜明

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