2025年度第1回財務問題研究会(第37回)開催報告

■開催日時:令和7(2025)年11月22日(土)13:40~16:50
■開催場所:大手前大学大阪大手前キャンパスC棟2階 C206教室
■参加者数:22名
■テーマ:新学校法人会計基準における決算
■タイムスケジュール:

時間内容
13:40~13:45(5分)開会挨拶
13:45~15:45(120分)第一部:講演「私学法改正に伴う学校法人会計の変更点」
講師:日本公認会計士協会 理事(前非営利担当常務理事)  稲垣正人 氏
15:45~15:55(10分)休憩
15:55~16:45(50分)第二部:グループディスカッションと発表
テーマ:学校法人会計基準の改正って、どうすればいい?
16:45~16:50(5分)閉会挨拶

■概要:
 補助金の適正配分を主な目的として私立学校振興助成法の基準として位置づけられていた学校法人会計基準は、ガバナンス強化のための情報開示を主な目的とする基準として私立学校法に位置づけられた。令和6(2024)年9月には「学校法人会計基準の一部を改正する省令(文部科学省令第28号)」が公布され、令和7(2025)年4月1日から新たな学校法人会計基準が施行された。これに伴い、令和7(2025)年度決算から“新”学校法人会計基準に沿った計算書類を作成することになり、「これまでの決算と何が変わるのか」、「どのような対応が必要なのか」をしっかりと理解し、決算手続や処理を漏れなく行っていく必要がある。
 この度の研究会では、第一部に学校法人会計基準の在り方に関する検討会の委員でおられた稲垣正人先生を昨年度に引き続き、再度お招きし、令和7(2025)年度決算を迎えるにあたって事前にしておくべき取り組み・注意点の解説、第二部ではグループディスカッションを通じて、第一部の講演を聞いた感想や疑問点、各大学の取り組み状況などを共有し、発表を行った。第一部、第二部を通して「新学校法人会計基準」に向けた変更点や対応上の留意すべきポイントをつかむとともに本テーマについての理解を深めた。

■内容:
第一部
 従来の会計基準は私学助成の申請を適正に行うことを目的として整備されていたが、近年はガバナンス強化や多様化するステークホルダーへの説明責任が求められる状況となっている。このため、会計基準および計算書類に関する規定を私立学校法に一元化する改正が行われたことなど、これまでの経緯を踏まえた主要な変更点を振り返りつつ、令和7年3月27日付発出「学校法人会計基準の一部改正に伴う計算書類の作成等について」(文部科学省通知)に記載のあった、当該新基準の施行にあたり留意すべき事項等の解説が行われた。
 振り返りでは、今般の改正により、大臣所轄学校法人は新たな学校法人会計基準に基づいて計算書類を作成する必要があり、私学助成を受ける法人は従来どおり助成法に基づく内訳表の作成も求められる。また、監査についても大きな変更があり、これまでの助成法監査と監事監査に加えて、会計監査人による法定監査が新たに義務付けられ、両監査の併存体制が構築される等の説明があった。
 新基準の施行に当たって留意すべき事項等では、①引当金について、②セグメント情報について、③子法人に関する事項について、④注記事項について、⑤附属明細書の記載方法といった、各項目に関して解説があった。

第二部
 グループディスカッションを通じて、第一部の講演を聞いた感想や疑問点、各大学の取り組み状況などを共有し、発表を行った。各グループからは、人件費に係る発令主義の考え方、人件費の案分、人件費内訳表の確定フローといった主に人件費に関する取扱いについて話題になっていた。また、理事会スケジュールや監査のことについて話し合ったグループもあった。

質疑応答
・会計監査人による事業報告書のチェックについて:
事業報告書は私学法監査上の「その他の記載内容」に該当するため、厳密な意味では監査対象ではない。但し、通査(一定期間の取引記録などを全体的に目視して異常がないかを確認する)する程度の位置づけにはある。
・従来発令主義で算出した人件費に対する今後の対応について: 
基本、発令主義のままでも構わないが、根拠づけて対応することが肝要である。
・賞与給与引当金の計上に係る過年度修正について:
令和6年度までに引当金を計上していない場合の調整方法としては、令和6年度末時点の引当金相当額を過年度修正として令和7年度計算書類に反映すること。また、計上する時期として、令和7年度計算書類の決算処理(令和8年度4月以降)に間に合うように処理することが適当である。 
・財産目録と収益事業会計の貸借対照表及び損益計算書について:
財産目録が収益事業を含む学校法人等全体を一体として、法人全体の財産の状況を明らかにする建付けとしてしている。よって、収益事業の貸借対照表及び損益計算書の作成が義務化されており、これらの計算書類は、財産目録の後に綴じられる。

主催:大学行政管理学会 財務問題研究会
世話人代表 佐藤 浩輔(大阪体育大学)
世話人  島村 由紀(藍野大学)、福井 文 (大手前学園)、石田 禎人(京都橘大学)
     前河 泰正(大阪国際大学)、原田 寛之(神戸学院大学)

                                                 以 上

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